「環境に優しい太陽電池」実現へ 結晶の合成条件解明:AgBiS2ナノ結晶
東京農工大学は、より正確なAgBiS2ナノ結晶を合成反応させる際の温度について、その適切な条件を解明したと発表した。合成したAgBiS2ナノ結晶を用いて作製した光検出器は、37A/Wという高い応答度を示した。
東京農工大学は2025年8月、より正確なAgBiS2ナノ結晶を合成反応させる際の温度について、その適切な条件を解明したと発表した。合成したAgBiS2ナノ結晶を用いて作製した光検出器は、37A/Wという高い応答度を示した。
AgBiS2ナノ結晶は、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、硫黄(S)で構成され、環境に優しい材料として太陽電池や光検出器への応用が期待されている。ただ、結晶自体の性質は十分に解明されていなかった。
そこで今回は、AgBiS2ナノ結晶を合成反応させる際の温度に着目した。実験では、X線回析法(XRD)や高分解能の電子顕微鏡法(HR-TEM)を用い、各温度で得られた生成物を分析した。この結果、160℃を超えるとAgBiS2が得られることを確認した。しかも、温度環境によって異なる組成の結晶が合成されることも明らかにした。
さらに研究グループは、AgBiS2ナノ結晶を用いて光検出器を作製した。ここで得られた応答度は、これまで報告されていた性能を上回るもので、高い光吸収効率を持つことが分かった。
生成されたAgBiS2ナノ結晶を含む溶液と高分解能電子顕微鏡像[クリックで拡大] 出所:東京農工大学
今回の研究成果は、東京農工大学大学院工学府化学物理工学専攻のFidya Azahro Nur Mawaddah氏、Dadan Suhendar氏、同大学工学研究院先端電気電子部門のSatria Zulkarnaen Bisri准教授、同大学工学研究院先端物理工学部門の箕田弘喜教授、清水俊樹助教らによるものである。
室温動作で高感度の広帯域THz検出器、CMOS回路との集積も容易
東京農工大学や中国科学院、兵庫県立大学らの共同研究チームは、シリコン素材を用い、室温で高速・高感度、広帯域検出が可能な「テラヘルツMEMSボロメーター」を開発した。CMOS回路との集積も容易で、次世代のテラヘルツセンシング技術として注目される。
独自手法でβ型酸化ガリウムを高速成長
東京農工大学の熊谷義直教授らのグループは、次世代パワー半導体の材料として注目されている「β型酸化ガリウム」結晶を、高速に成長させる技術を開発した。このβ型酸化ガリウム結晶は、独自の減圧ホットウォール有機金属気相成長(MOVPE)法を用いて成長させ、高い精度でn型キャリア密度を制御している。
グラフェン素子からの波長可変な赤外発光を初観測
東京農工大学の研究グループは、情報通信機構やアデレード大学、東京大学と協働し、磁場下のグラフェン素子において、波長を可変できる電気駆動の赤外発光を初めて観測したと発表した。
イオン伝導性と強度を両立 リチウム二次電池用の新材料
東京農工大学の研究グループは、イオン伝導度と力学的強度を両立させた「リチウム二次電池用固体ポリマー電解質材料」を開発した。比較的高い架橋部位の密度を有する架橋高分子に高濃度の塩を溶解させる新たな材料設計により実現した。
高性能有機ELデバイス、東京農工大らが開発
東京農工大学と九州大学の研究グループは、有機薄膜の自発分極や電荷輸送特性を精密に制御することで、耐久性に優れた有機ELデバイスの開発に成功した。
鉄系高温超伝導磁石、従来最高比で磁力は2倍超に
東京農工大学、九州大学および、ロンドン大学キングス・カレッジは、研究者の知見とAIを融合した設計手法を用い、磁力がこれまでの最高値に比べ2倍以上という「鉄系高温超伝導磁石」の開発に成功した。医療用MRIレベルの磁場安定性を持つことも実証した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.