東京農工大学の研究グループは、イオン伝導度と力学的強度を両立させた「リチウム二次電池用固体ポリマー電解質材料」を開発した。比較的高い架橋部位の密度を有する架橋高分子に高濃度の塩を溶解させる新たな材料設計により実現した。
東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門の富永洋一教授と同木村謙斗助教および、生物システム応用科学府博士後期課程のNantapat Soontornnon氏らによる研究グループは2024年7月、イオン伝導度と力学的強度を両立させた「リチウム二次電池用固体ポリマー電解質材料」を開発したと発表した。比較的高い架橋部位の密度を有する架橋高分子に高濃度の塩を溶解させる新たな材料設計により実現した。
研究グループはかねて、二次電池向け材料として二酸化炭素/エポキシド共重合によって得られる「脂肪族ポリカーボネート」に着目してきた。従来の材料に比べ高い塩溶解能や高リチウムイオン伝導度を示すためだ。また、重合条件や触媒種を制御することで、一定比率のエーテル結合を含みポリエーテル系材料の利点も取り込んだ材料開発にも成功してきた。ただ、優れた加工性や安定した充放電サイクルを実現するには、イオン伝導性と力学的強度を両立させる必要があった。
そこで今回、高分子の架橋の有用性に着目した。実験では、二酸化炭素(CO2)、エチレンオキシド(EO)および、架橋部位となるアリルグリシジルエーテル(AGE)をモノマーとして触媒と一緒に耐圧容器内へ仕込み、ポリ(エチレンカーボネート/エチレンオキシド/アリルグリシジルエーテル)(P(EC/EO/AGE))を合成した。この時、モノマーの仕込み比率を変えることで、さまざまなEC/EO/AGEユニット比率を有する共重合体を用意した。
固体電解質は、P(EC/EO/AGE)と架橋反応の開始剤を、リチウム塩(リチウムビスフルオロスルホニルイミド:LiFSI)とともに溶媒へ溶解させ架橋させる方法で作製した。この時、架橋部位比率と塩濃度について実験を繰り返し行い、最適な組み合わせを探した。
実験の結果、架橋部位(AGEユニット)比率が約30%と比較的高い架橋共重合体に、濃度が極めて高いリチウム塩を含ませた膜状の電解質が、バランスの取れたイオン伝導性と強度を示すことが分かった。
研究グループは、負極にリチウム金属、正極にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いたリチウム二次電池を試作し評価した。これにより、400回以上の充放電サイクルが可能であることを確認した。
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