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室温動作で高感度の広帯域THz検出器、CMOS回路との集積も容易応答速度は焦電検出器の最大1000倍

東京農工大学や中国科学院、兵庫県立大学らの共同研究チームは、シリコン素材を用い、室温で高速・高感度、広帯域検出が可能な「テラヘルツMEMSボロメーター」を開発した。CMOS回路との集積も容易で、次世代のテラヘルツセンシング技術として注目される。

» 2025年07月24日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

1〜10THzの広い周波数帯で平たんな感度スペクトル示す

 東京農工大学や中国科学院、兵庫県立大学らの共同研究チームは2025年7月、シリコン素材を用い、室温で高速・高感度、広帯域検出が可能な「テラヘルツMEMSボロメーター」を開発したと発表した。CMOS回路との集積も容易で、次世代のテラヘルツセンシング技術として注目される。

 テラヘルツ(THz)波は、非破壊検査や空港での安全検査、がんなどの疾病診断、超高速通信など、さまざまな領域での応用が期待されている。携帯型THz測定器などへの利用も進む。これらの用途では室温環境での動作や、より高い動作周波数が求められている。ところがこれまでは、極低温冷却が必要であったり、動作周波数が1.5THz以下の低周波数帯に限られていたりしていた。

 そこで今回、SOI技術で作製したMEMS共振器を用いてTHz検出器を開発した。機械的な共振は、室温付近でも熱膨張効果によって温度変化に対し直線的な応答を示すという。この特性を利用し、ノイズ等価電力NEPが約36pW/√Hz、熱応答時間が約88マイクロ秒という、高感度・高速応答の検出器を実現した。

 この結果、応答速度は焦電検出器の約100〜1000倍となり、THz・赤外計測に適していることを実証した。また、1〜10THzという広い周波数帯で平たんな感度スペクトルを示すなど、近赤外領域までの拡張も可能なため、分光など広帯域計測への応用にも適していることが分かった。

MEMS検出器のイメージ図[クリックで拡大] 出所:東京農工大学他 MEMS検出器のイメージ図[クリックで拡大] 出所:東京農工大学他
開発したSOI MEMS検出器と他の検出器による、感度と検出速度の比較[クリックで拡大] 出所:東京農工大学他 開発したSOI MEMS検出器と他の検出器による、感度と検出速度の比較[クリックで拡大] 出所:東京農工大学他

 今後は、開発したSOI MEMS検出器の実用化に向け、実際の応用環境で性能検証に取り組む。また、大規模な検出器アレイとしての実用化を目指すことにしている。

 今回の研究成果は、東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門の張亜准教授、平川一彦客員教授、工学府電子情報工学専攻博士前期課程の江端一貴氏、飯森未来氏、竹内遼太郎氏、博士後期課程の劉千氏、趙子豪氏、中国科学院上海マイクロシステム情報技術研究所の黎華教授、兵庫県立大学の前中一介教授らによるものである。

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