2024年の車載半導体市場ランキングを見ると、首位のInfineonはシリコン(Si)およびSiCパワーモジュール、ドライバー、MCUで優位に立ち売上高は80億米ドル以上を記録。市場におけるシェアは12%となっている。2位はNXP Semiconductors(以下、NXP)で、車載ネットワークMCUおよびレーダー、トランシーバーで強みを持ちシェアは10%に。3位のSTMicroelectronics(以下、ST)のシェアは9%で、Yoleは「STは長期的な成長を目指し、ディスクリート、電動化、MCUプラットフォームにおける優位性を維持している」と説明している。
Yoleのレポートを見ると、ランキングはさらに4位にTexas Instrument、5位にルネサス エレクトロニクスと続いている。Yoleは、これら上位5社が車載半導体市場の約50%を占めているとしつつ「新たな挑戦者が急速に勢力を伸ばしている」とも強調している。
中国は2025年までに自動車部品の国産化率を25%に引き上げるべく自動車メーカーに推奨していて、Yoleは「既に自動車業界の様相は一変しつつある」と説明。中国半導体メーカーHorizon RoboticsやSiEngine、Black SesameらはコックピットやADAS向けで、BYD SemiconductorとStarPowerは既にSi IGBTの一部やSiC MOSFETの分野で国内自動車メーカーでの採用が進んでいるという。
自動車メーカーによる垂直統合型としても、NIOがTSMCの5nmプロセスを採用した1000TOPSの独自ドメインコントローラーをテープアウト。BYDも自社開発のMCUとSiC MOSFETを独自バッテリーパックと組み合わるなどしていて、Yoleは「これらの例だけでなく、他の複数の自動車メーカーも同様の道をたどっている」としている。また、生産能力についても、SMICが28nm/40nmノード向けに月間約10万枚のウエハーを処理できる12インチ工場を4つ建設中だという。Yoleは「中国の強みは、国内政策、製造能力の拡大、そして機敏な垂直統合にあることは疑いようがない」と述べている。
一方、16nmプロセス以下の領域ではTSMCとSamsungの2社のファウンドリーによる競争となっているという。Yoleは「TSMCのN5AとSamsungのSF5Aは、現在AEC-Q100規格に準拠する最も先進的なプロセスだ」と説明。この点では生産能力割り当てが競争軸となっていて、Yoleは「NVIDIAの『Thor』、Qualcommの『Snapdragon Ride』、Mobileyeの『EyeQ7』は、2027年までの5nmプロセス採用品における生産能力の大部分を既に確保している」としている。
Yoleはレポートにおいて、米国企業が市場の36%を占めていることにも触れている。主な分野はアナログ、メモリおよびハイエンドSoC(System on Chip)ソリューションで、Yoleは「NVIDIAやAMD、QualcommはAIコンピューティングを車載エッジに導入していて、今後の成長は先進運転支援システム(ADAS)、自動運転、コックピットコンピューティングへのSoCの浸透にかかっている」としている。
日本についてはルネサスの他、ロームやデンソーなどがレガシーMCUやセンサー、SiCパワーデバイス分野において「以前として強固な地位を維持している」と説明。Yoleの車載半導体部門の主任アナリスト、 Pierrick Boulay氏は「ルネサスは市場シェアを回復し、ロームとデンソーはEVインバーター向けのSiC MOSFETで成長を遂げている」とコメントしている。
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