三菱電機が、車載SiCデバイスの技術開発を強化している。2024年に車載用パワー半導体モジュールの量産品として同社初のSiC MOSFET搭載品である「J3」シリーズを発表した同社は、世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo&Conference 2025」において、開発中の「J3シリーズ SiCリレーモジュール」を初公開した。
三菱電機が、拡大が見込まれるxEV(電動車)市場に向け車載SiC(炭化ケイ素)デバイスの技術開発を強化している。2024年に車載用パワー半導体モジュールの量産品として同社初のSiC MOSFET搭載品である「J3」シリーズを発表した同社は、世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo&Conference 2025」(2025年5月6〜8日/ドイツ・ニュルンベルク)において、開発中の「J3シリーズ SiCリレーモジュール」を初公開した。
三菱電機は、1997年に世界初となるハイブリッド車向けの供給をして以降、xEV向けパワー半導体モジュールの出荷実績を積み上げていて、これまでに3350万台以上の搭載実績を有するという。同社の車載用パワー半導体モジュールは、シリコンベースの「J」シリーズおよび「J1」シリーズがあるが、2024年1月、SiC MOSFETに最適な設計を採用し、サイズを60%削減するなどしたJ3シリーズを満を持して発表。車載SiCパワーデバイス市場でも攻勢に出た。
直近では、BEV(バッテリー電気自動車)需要の鈍化や中国景気後退などを背景に、2025年5月にパワーデバイス事業の設備投資の一部延期を発表。8インチSiCウエハー生産に対応した熊本県菊池市の泗水地区の新工場棟についても、立ち上げは計画通りに進める一方で拡張投資は2031年度以降に延期するなどとしているが、同社は中長期的にはパワー半導体が力強く成長するという見方は維持。特にEVへの搭載を契機にSiCパワー半導体市場は2023年〜2028年まで年平均成長率(CAGR)30%で成長すると期待し、SiCパワーモジュールの展開を強化している。
「J3」シリーズの特長は下記リンクでも紹介しているが、低損失で高速駆動が可能なトレンチ型のSiC MOSFETを搭載。2in1仕様のパワー半導体モジュール「J3-T-PM」を基本構成要素とし、同社独自のピンフィン形状を持つアルミフィンにJ3-T-PMを3個搭載する「J3-HEXA-S」および、J3-T-PMを6個搭載する「J3-HEXA-L」といった形で、さまざまなxEV用インバーター設計にスケーラブルに対応可能となっている。また、J3シリーズはRC-IGBT搭載版も用意していて、搭載チップの種類やモジュール並列数などを変更することで、幅広い出力に対応が可能だ。
同社の説明担当者は「自動車メーカーは、小型車やハイパワーの車両などさまざまな車種を扱う。また自動車業界の競争は熾烈で、設計開発におけるリソースや労力の最適化が望まれている。1つの基本設計があり、それをモジュール式に拡張できるJ3モジュールはそうした課題に対応するものだ。最適な設計をまず確立し、それを柔軟に調整できる」と強調していた。J3シリーズは既にサンプル提供中で、2026年にも量産開始する見込みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.