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「富岳NEXT」開発が始動 GPUでNVIDIA参画、Rapidus採用の可能性も富岳の100倍の性能を目指す(1/3 ページ)

理化学研究所(以下、理研)は、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラグシップシステム(開発コードネーム「富岳NEXT」)の開発体制が始動したと発表した。全体システムやCPUの基本設計は富岳から続けて富士通が担うほか、今回初めてGPUを採用し、その設計にNVIDIAが参画する。

» 2025年08月26日 10時30分 公開
[浅井涼EE Times Japan]

 理化学研究所(以下、理研)は2025年8月22日、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラグシップシステム(開発コードネーム「富岳NEXT」)の開発体制が始動したと発表した。

 富岳NEXTの開発にあたっては、全体システムと計算ノード、CPUの基本設計を富士通が、ソフトウェア/アルゴリズムの開発を理研が主導する。さらに、アクセラレーターには日本のフラグシップシステムとして初めてGPUを採用し、その設計をNVIDIAが主導することも明かした。富岳NEXTは2030年頃の稼働を目指す。

「富岳NEXT」開発体制始動の記者会見の様子。前列左から富士通 CTO(最高技術責任者)のVivek Mahajan氏、文部科学省 研究振興局 局長の淵上孝氏、理化学研究所 理事長の五神真氏、NVIDIA バイスプレジデントのIan Buck氏 「富岳NEXT」開発体制始動の記者会見の様子。前列左から富士通 CTO(最高技術責任者)のVivek Mahajan氏、文部科学省 研究振興局 局長の淵上孝氏、理化学研究所 理事長の五神真氏、NVIDIA バイスプレジデントのIan Buck氏[クリックで拡大]

国際連携強化 「Made in Japan」から「Made with Japan」へ

 理研は2022年度から富岳に続くフラグシップシステムの開発に向けた事前調査研究を始め、2025年1月には開発コードネームを富岳NEXTとして開発を始めると発表していた。同年6月には全体システムや計算ノード、CPUの基本設計を富士通が担うことが決定し、既に理研と共に基本設計を進めている。

 富岳NEXTプロジェクトの意義について、理化学研究所 理事長の五神真氏は「計算は人類の社会や文明の発展を支えてきた、文明の礎だ。今、人類は異常気象や国際的緊張の高まり、経済/社会的格差の拡大など、かつてない課題に直面している。私たちはAIや先端半導体、量子技術といった技術的変革を捉え、人類の計算可能な領域を拡大し、共通の課題を乗り越えていかなくてはならない。富岳NEXTはこの時代が求める人類共有の計算基盤で、その実現には大きな意義がある」と語った。

 理研は、富岳NEXTの開発戦略として「技術革新」「持続性/継続性」「Made with Japan(メイドウィズジャパン)」の3つを掲げている。

富岳NEXTの開発戦略 富岳NEXTの開発戦略[クリックで拡大] 出所:理化学研究所

 技術革新については高性能のCPUとGPUの密結合による広帯域/ヘテロジニアスなノードアーキテクチャ、先進的なメモリ技術などの共同開発を行う。また、AI/高性能コンピューティング(HPC)技術のさらなる発展とその高度利用によって、アプリケーション実効性能は富岳比で最大100倍程度の向上を目指す。

 持続性/継続性については、標準規格や既存のエコシステムとの親和性を高めるほか、今後の先端システムに合わせたアプリケーションの現代化を行い、そのサポート体制も構築する。富岳での取り組みを進化させた運用技術の高度化で省エネルギー化の実現も目指す。

 「Made with Japan」については、国際連携でのプロジェクト推進による高度人材の育成や技術革新の加速、情報技術における主権の確保を目指す。あくまで「Made in Japan(メイドインジャパン)」ではなく「Made with Japan」だといい、五神氏は「日本の技術力を基盤としながらも、世界のパートナーと協働する」と強調した。

 富岳NEXTプロジェクトの2025年度予算は約73億円だ。今後も含めた全体での予算は検討段階だが、富岳の約1100億円という実績なども踏まえて今後決定する。

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