複数の市場調査によると、今後10年以内に、米国が高性能半導体チップの生産能力を約1.3倍に増強する一方、中国は成熟ノードの能力を拡大し、世界ファウンドリー市場シェアでトップになる見込みだという。
半導体業界の2つの市場調査によると、今後10年以内に、米国が高性能半導体チップの生産能力を約1.3倍に増強する一方、中国は世界ファウンドリー市場をリードする存在になる見込みだという。
米国と中国は、AIにおける優位性の確立や国家安全保障の強化を巡る競争の中で、国内半導体エコシステムを構築すべく、数十億米ドル規模の補助金を投入している。しかし、両国の取り組みにはギャップが生じている。
フランスの市場調査会社Yole Groupの主席アナリストであるPierre Cambou氏は、2025年7月11日付のレポートの中で「米国は現在、先進ノードにおける位置付けを強化している。中国は2030年までに、世界半導体生産能力全体に占める割合が30%に達する見込みだ」
Cambou氏はMicron TechnologyとTSMC、Texas Instruments、GlobalFoundriesによる近年の米国への投資総額が5000億米ドルに上ることも指摘。「これは、5年間のタイムラインで予想される世界のファブ投資額全体の約3分の1に相当する。米国は中国に匹敵するレベルまで投資額を増やしているが、先進ノードの生産能力に投資が集中しているようだ」と述べている。
同氏によると、世界ウエハー生産能力に占める米国の割合は、2030年までに15%に達し、世界有数の半導体エコシステムとしての位置付けを強化する可能性があるという。世界半導体生産に占める米国の割合は、過去数十年間で40%から約10%まで縮小しているが、これは業界が低コストを追求してアジアにシフトしてきたためだ。
米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)が発表したレポート「2025 State of the U.S. Semiconductor Industry」によれば、米国の半導体生産能力は、早ければ2032年には3倍にまで増大する可能性があるという。
SIAは「半導体エコシステムのメーカー各社は2025年7月時点で、米国の半導体エコシステムを再生すべく、5000億米ドル超の民間投資を発表していて、2032年までに米国の半導体生産能力を3倍に増強する計画が始動している」と述べている。
「その成功を踏まえて、米国政府は2025年7月に、企業の投資を促進する重要な税制遇措置『Advanced Manufacturing Investment Credit(AMIC:先進製造投資税額控除)』を強化する法律を制定した。この新法によってAMICの税率が25%から35%に引き上げられる」(SIA)
米国政府はトランプ政権およびバイデン政権の下、国内の半導体業界にインセンティブを与えながら、一方で中国の進展を阻止してきた。トランプ大統領は現政権下において、530億米ドルの投資に対する利益を増加させるべく、バイデン政権下の「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)を改訂しようとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.