大阪大学らによる国際共同研究チームは、半導体デバイスの熱問題を解決するための新たな冷却技術を開発した。開発したナノデバイスは、電界効果でイオンの流れを制御でき、「冷却」と「加熱」の機能を同じデバイスで切り替えられる。
大阪大学と東京大学、産業技術総合研究所および、イタリア技術研究所(IIT)による国際共同研究チームは2025年11月、半導体デバイスの熱問題を解決するための新たな冷却技術を開発したと発表した。開発したナノデバイスは、電界効果でイオンの流れを制御でき、「冷却」と「加熱」の機能を同じデバイスで切り替えられる。
研究チームは今回、ナノデバイスを開発した。これは直径が約70nmの微小な孔(ナノポア)を、シリコンなどの固体膜に加工して作製し、その周囲にゲート電極を組み込んだ構造となっている。このナノポアは、特定のイオンだけを通すことができる「イオンの片道通行路」となる。
実験では、このナノポアを塩水で満たし、ゲート電極に負の電圧を加えてナノポア側壁に負の電荷を帯びさせた。この結果、正の電荷を持つ陽イオンだけ通過することが分かった。負の電荷を持つ陰イオンは側壁からの反発によってナノポアを通過できなかった。ナノポアの近くに微小の温度計を設置し、ナノポア周囲の温度変化を測定した。陽イオンが流れることでナノポアの反対側に熱を運び出すため、ナノポア周辺の水温は室温よりも低くなった。
これは、「イオン版ペルチェ効果」と呼ばれる現象で、ゲート電圧を調整すれば冷却効果をさらに高められるという。実験では温度が最大約2℃低下することを確認した。また、ナノポアの上下で塩分濃度を変えて温度を測定したところ、ナノポア周辺の水温が上昇するという現象も観測された。同一デバイスでも印加する電圧によってイオンの流れが変わり、水の温度を冷却したり加熱したりできることを実証した。
今回の研究成果は、大阪大学産業科学研究所の筒井真楠准教授、川合知二招へい教授、東京大学大学院工学系研究科の大宮司啓文教授、徐偉倫准教授、産業技術総合研究所の横田一道主任研究員、イタリア技術研究所(IIT)のDenis Garoli研究員らによるものだ。
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