スイッチング損失を20%低減、車載用高圧3相モーター用ドライバー:最大定格650V/50A
サンケン電気は、高圧3相モーター用ドライバー「SAM2シリーズ」として、車載用途に向けた最大定格650V/50Aの「SAM265M50AS3」の量産を始めた。スイッチング速度を高めることで、同等の他社製品に比べスイッチング損失を20%以上も低減したという。
サンケン電気は2025年10月、高圧3相モーター用ドライバー「SAM2シリーズ」として、車載用途に向けた最大定格650V/50Aの「SAM265M50AS3」の量産を始めたと発表した。スイッチング速度を高めることで、同等の他社製品に比べスイッチング損失を20%以上も低減したという。
SAM265M50AS3の外観[クリックで拡大] 出所:サンケン電気
SAMシリーズは、出力スイッチング素子やプリドライバー、制限抵抗付きブートストラップダイオード、サーミスターなど3相モーターの制御に必要となる複数のデバイスをワンパッケージに集積した。これによって、実装する基板面積を小型化でき、高圧回路の設計を容易にした。
具体的にSAM265M50AS3では、DBC(Direct Bonding Copper)構造を採用し、出力スイッチング素子(IGBT)6個、フリーホイールダイオード6個、ハイサイドドライバーIC3個、ローサイドドライバーIC1個、制限抵抗付きブートストラップダイオード3個および、温度検出用サーミスター1個を実装した。パッケージは外形寸法が52.5×31×5.6mmのDIP30で供給する。
特に、温度検出用サーミスターをパワーチップと同じDBC基板上に設置したことで、急激な温度変化などに対しても、より精度の高い温度検出が可能となった。また、高い安全性が求められる車載用途を視野に入れ、VCC端子とOCP端子がGND端子と隣接しないような端子配置とした。
この他、絶縁耐圧は2500V(1分)を、ジャンクション温度は175℃を、それぞれ保証している。パワーデバイスの信頼性を証明する規格「AQG324」にも準拠した。保護機能としては、電源電圧低下保護機能や過電流保護機能をサポートしている。
SAM2シリーズの構造例と温度検出精度の例[クリックで拡大] 出所:サンケン電気
GaNパワー半導体市場で拡大狙うサンケン電気、パウデックを吸収合併
サンケン電気は窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス市場での拡大を狙い、開発を加速している。2025年8月13日には低オン抵抗で高耐圧化が容易な独自GaN技術を有する子会社パウデックの吸収合併をすると発表した。
22nmとRRAMを活用、パワー制御システム用RISC-Vマイコン
サンケン電気は、TSMCの22nm超低リーク(22ULL)プロセスとRRAM(抵抗性ランダムアクセスメモリ)技術を活用し、RISC-V CPUコア内蔵の「パワー制御システム向けMCU」を共同開発した。2025年第4四半期(10〜12月)より量産を始める。
CHIPS法の成功事例となるか パワー半導体ファウンドリーを目指すPolar
米CHIPS法による助成金を最初に獲得した企業で、サンケン電気の米国子会社でもあるPolar Semiconductorは、より幅広い顧客向けにパワー半導体を製造する商業ファンドリーへと転換しようとしている。半導体製造の自国回帰を進める米国にとって、Polarの戦略が成功するか否かは重要な指標になりそうだ。
サンケン電気が志賀工場を閉鎖へ、能登半島地震で被災
サンケン電気は、令和6年能登半島地震で被災した石川サンケンの志賀工場(石川県志賀町)を2026年4月末に閉鎖する。2024年1月の被災後、復旧活動を進めて全面的な生産を再開していたが、震災影響評価の結果、恒久的使用は困難との結論に至ったという。同社は今後、グループ後工程における生産再編の実施を行う予定だ。
白物家電を小型化 高圧3相モーター用ドライバー
サンケン電気は、定格電圧600V/定格電流20Aの高圧3相モーター用ドライバー「SIM2-202B」を開発、量産を始めた。エアコンなどインバーター制御を行う白物家電製品の小型化や高効率化、高品質化が可能となる。
PFCとLLCを1個のICで制御、周辺部品21個が不要に
サンケン電気は2024年7月、PFC(力率改善回路)制御機能を内蔵したLLC電流共振電源用制御IC「SSC4S911」の量産を開始したと発表した。PFC部とLLC部を1つのICで制御でき、別個のICで制御する場合に比べ21個の部品を削減できるという。
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