東京大学物性研究所は、東京都立大学や東京理科大学、神戸大学、東北大学と共同で、BiSb(ビスマスアンチモン)合金が強磁場下において、奇妙な電気伝導特性を示す状態になることを確認した。
東京大学物性研究所の山口侑真氏(徳永研究室元修士課程学生)らは2025年4月、東京都立大学や東京理科大学、神戸大学、東北大学と共同で、BiSb(ビスマスアンチモン)合金が強磁場下において、奇妙な電気伝導特性を示す状態になることを確認したと発表した。
金属に極めて強い磁場を加えると「量子極限状態」になる。この状態からさらに磁場を増やした「超量子極限状態」では、電子間相互作用が支配的となる強相関状態になる。三次元の金属が超量子極限状態となった時、強相関効果でどのような量子現象が現れるかはこれまでも認識されてきたが、これを実証するには1万テスラを超える磁場が必要となるため、実験はほとんど行われてこなかったという。
研究グループは今回、無磁場下では半金属だが、強い磁場を加えると半導体になると期待されているBiSb合金に着目し、強磁場下における電気的特性を調べた。実験では、加えた磁場が30テスラを超えると、縦磁気抵抗が発散的に増大するのを確認した。一方で、同じ方向に磁場をかけた状態で横磁気抵抗を測定すると、金属に特徴的な量子振動が観測された。
この量子振動を解析したところ、試料は磁場が30テスラを超えたあたりから、完全バレー分極を伴う「量子極限状態」となり、60テスラまでの範囲で「超量子極限状態」になることが分かった。
研究グループによれば、「超量子極限状態で、なぜ磁場方向のみ電流が流れなくなるかは今後解明する必要がある」としながらも、「磁場で増強された電子相関の影響によって実現した『新奇量子状態』の可能性がある」とみている。また、同様の現象は他の半金属でも期待できるという。
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