インドはデザインハブとして、そして顧客拡大の基盤として、TIの戦略の中心に位置している。Bruder氏によると、世界のエンジニアリング人口の約20%がインドに拠点を置いているという。「これが、TIが40年前にインドでの事業展開を始めた理由の1つだ。製品設計と顧客とのエンゲージメントの両方を通じて、この強みを生かしていきたい」
この取り組みは人材育成プログラムにも及ぶ。TIは、工学部2年生の女子学生を対象とした「半導体/ハードウェア分野の女性活躍プログラム(WiSH)」を運営している。2025年には4回目を迎え、1500人以上が登録し190人が参加した。このプログラムは、3週間のオンラインメンタリングと、TIのベンガルールキャンパスでの1週間の研究室訪問やエンジニアとのセッションを組み合わせたものだ。Bruder氏によると、このプログラムは、製品設計や営業といった職種を問わず、半導体分野に若手エンジニアを引き付けるためのTIの取り組みの一環だ。
インドは人材の供給源であるだけでなく、拡大する市場でもある。「インドは世界有数の経済大国であり、急速に成長している。多国籍企業がインドに投資し、その設計/エンジニアリング能力を活用しているほか、多くの地元企業も非常に活発に活動している。こうした企業がTIの顧客だ」(Bruder氏)
Bruder氏は「インドの顧客はシステムレベルのソリューションをより多く求めていて、TIはリファレンスデザインとデモを通じてこれらをサポートしている」と述べた。また、インドは地域のニーズに基づいたイノベーションにおいてしばしばリードしていると指摘する。「インドは暑いので、効率的なHVACシステムが求められる。豊富な日照量を考慮してソーラーパネルと組み合わせることで、地域に根ざしたソリューションを提供できる。これは地域のニーズに基づいたイノベーションであり、持続可能な方法で実現されている。まさにインドがリードしている分野だ」(Bruder氏)
自動車、特に電動二輪/三輪車にも焦点が当てられている。Bruder氏は「重要なのは価格だ」と述べる。「TIのチップはシステムコストの削減に役立つ。TIはシームレスなスマートフォン接続を備えた電動二輪車とガソリン二輪車の両方のデモを用意している」(Bruder氏)
TIは、2025年9月にバンガロールで開催された「electronica India 2025」で、再生可能エネルギーの重要性を強調し、太陽光発電で効率的な電力変換を行うC2000マイコンを展示した。C2000シリーズの新製品「F28E12」は、1000個注文時の単価は49セントからだといい、コストに敏感なインド市場向けだ。
TIは製品開発以外にも、チップの購入経路拡大も進めていて、TIの公式サイトから現地通貨で購入することも、TIの認定代理店から購入することもできる。「顧客は1個から注文できる。最低注文数はない」とBruder氏は言う。
インドを含む顧客との密接な交流によって得られた課題は、製品設計にフィードバックされる。「このようにして、私たちは現地市場向けに設計された製品をリリースし、インドのイノベーションを支援している」(Bruder氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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