東京都立大学と鳥取大学の研究グループは、全固体電池に向けた固体電解質材料開発において、高い導電性と安定性を両立させるための新たな原理を解明した。この原理は、リチウム系に限らず他のイオン種にも応用できるという。
東京都立大学大学院理学研究科の栗田玲教授と石川陸矢氏(博士後期課程)、鳥取大学の高江恭平准教授らによる研究グループは2025年11月、全固体電池に向けた固体電解質材料開発において、高い導電性と安定性を両立させるための新たな原理を解明したと発表した。この原理は、リチウム系に限らず他のイオン種にも応用できるという。
全固体電池は、電解質に固体材料を用いるため安全性が高く、電解質の漏れや熱暴走リスクが小さい。このため、次世代エネルギー貯蔵技術として注目されている。ただ、材料設計において高い導電性と構造安定性を両立させることが課題となっていた。
そこで研究グループは、複数の元素が無秩序に混在する結晶構造の「ランダム置換結晶」に注目した。実験では、ランダム置換結晶の中でイオンがどのように動くかを分子動力学(MD)シミュレーションによって解析した。具体的には、NaCl型構造を持つLixPb1-2xBixTeで、リチウムイオン(Li+)濃度を変えてイオン伝導の挙動を調べた。
シミュレーションの結果、Li+濃度が約20%を超えると、導電率が急激に上昇することが分かった。この臨界値はパーコレーション理論が予測するサイト連結のしきい値と一致。その原因として、イオンの濃度が一定以上になるとネットワークを形成し、結晶全体に連続的な導電経路を作ることを挙げた。
また、シミュレーションにおいても、格子構造は安定しており電場を加えても崩壊しないことを確認した。電場の方向(結晶方向)を変えても導電率の大きさは変化しないことが分かった。これは、イオンネットワークが結晶内で均一に広がっていることを示すものだという。
さらに、個々のイオンについてその動きを可視化した。これにより隣接するLi+が連鎖的に移動する「ノックオン機構」を確認できた。これは、「ドミノ効果」のような動きによって、効率的な伝導経路が形成されたとみている。最終的に導電率は6.8×10-3S/cmに達し、液体電解液と同等レベルであった。
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