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米政府が「H200」の対中輸出容認、NVIDIAはチャンスを生かせるか二転三転する政策(2/3 ページ)

» 2026年01月15日 08時00分 公開
[Pablo ValerioEE Times]

「H200」の輸出容認に米政府では激しい議論

 中国に対するハイエンドチップの販売は、米国政府による政策転換という大混乱期を経て再開された。バイデン前政権は、中国の軍事力の近代化を阻止すべく、高性能AI半導体に関する幅広い輸出禁止措置を講じてきた。

 トランプ大統領は最近、方針を大きく変更し、「承認された顧客」に対してH200の輸出を許可したが、その一方で「売上高の25%を手数料として米国政府に支払う」とする新たな規則を追加した。NVIDIAが中国向けに販売するためには、最初に半導体チップを米国へ出荷し、その25%を輸入税として支払い、「安全保障審査」を行ってから、中国の顧客向けに出荷しなければならない。

 専門家によると、この政策は「中国を抑え込む」ことから、「販売によって利益を得る」という方向への移行を示しているという。これに関しては米国政府内部で激しい議論が巻き起こっている。米民主党上院議員や一部の国家安全保障支持者たちは、この決定について「非常に危険だ。H200は、前世代品比で約6倍性能が高く、中国の軍事能力を加速させることになる」と主張する。7人の上院議員たちは、米国商務長官のHoward Lutnick氏に宛てた書簡の中で、「トランプ政権は、企業の利益のために国家安全保障を犠牲にし、危険にさらしている」と警告した。

 さらに同書簡には「重要な国家安全保障管理を手放すという大統領の危険な決断は、米国の技術が中国の軍事/技術能力を加速させないようにするという、長年にわたる超党派の取り組みから逸脱することを意味する」と書かれている。

 大統領の承認を得たとしても、官僚組織によって出荷が遅れている。輸出にはそれぞれ独自のライセンスが必要なため、出荷が遅延/停止する可能性がある。NVIDIAの経営陣は、「現在もライセンス手順に関する最終的な詳細を詰めている最中であるため、まだ出荷時期は分からない」と述べる。

トランプ大統領とHuang氏 出所:ホワイトハウス

中国はチップの「マッチング」戦略へ

 米国政府がNVIDIAによる中国への輸出に課税しようとしているのに対し、中国政府はそれを制限しようと画策している。中国政府は、H200を単なる製品ではなく、国内の自給自足を押し進めるための戦略的手段として扱っているのだ。

 Reutersの報道によると、中国の国家発展改革委員会(NDRC:National Development and Reform Commission)と工業情報化部(MIIT:Ministry of Industry and Information Technology)の規制当局は、「マッチング政策」を策定しているという。中国メーカーに対し、NVIDIAのH200を発注するごとに、Huaweiの「Ascend」シリーズのような中国製チップを一定数購入することを義務付けるというものだ。

 報道によると、中国政府はこの政策をうまく機能させるために、技術メーカーに対し、H200チップの調達を一時的に停止するよう要請したという。米国製チップを急いで購入しようとする動きを阻止し、国内企業の市場シェアを守るためだ。商用向けの購入者はこの先、NVIDIA製品を輸入する前に、中国製チップでは不十分だとする理由を説明しなければならないだろう。

 公的部門に関しては、アクセスは許されていない。中国政府は、軍や国有企業、主要インフラ事業者に対し、安全上のリスクや、米国がハードウェアを遠隔で停止させる可能性などがあるとして、H200の調達を禁止する予定だという。

 予測不可能な両政府の間で板挟みになっているNVIDIAは、自衛策として、中国の顧客に対して厳格な支払い規則を設定している。現在、購入者はH200の発注分全額を前払いしなければならず、キャンセルや払い戻しはできないという。

 この代金前払いの方法は、規制が変更された場合の金銭的リスクを、中国の発注側に全て負わせることになる。NVIDIAが慎重になっているのは、2025年の新しい米国輸出規制によって、一夜にして中国専用のH20チップが販売不可能になり、55億米ドルの在庫の評価損処理を行わなければならなかったという経験があったためだ。

 同社に詳しい情報筋は「NVIDIAは過去に痛い目に遭った」と語る。NVIDIAが提示した支払いのメカニズムは、政治情勢が再び変化しても、NVIDIAが損失を被ることはないという保証を与えている。こうした厳しい条件にもかかわらず、中国企業は依然として購入意欲が高く、大規模言語モデルの学習にはコンピューティングパワーが不可欠であることを示唆している。

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