――SiC LSIの研究開発はどのように進んできて、現在どの程度のところまで来ているのでしょうか。
黒木氏 プロセス技術の研究は、2013年ごろにトランジスタの基本プロセスから始めた。広島大のクリーンルームを活用して少しずつ組み上げ、この10年ほどでデバイスとしての試作が進んできた。これは、SiCパワーデバイスの技術がどんどん進んできたことも背景の1つだ。SiCウエハーの製造技術が発展し、それがLSI向けにも使えるようになった。
現在は、岡山県を拠点とするファウンドリー企業であるフェニテックセミコンダクター(以下、フェニテック)と共同研究をしている。広島大が設計とプロセスの検討を行い、フェニテックとすり合わせ、同社のSiCパワーデバイス用量産ラインで実際に試作し、広島大で評価する。そしてデバイスパラメータを抽出し、再度設計やプロセスを見直すという流れを繰り返している。
SiC LSIのプロセスはSi LSIとは全く異なるが、SiCパワーデバイスとは共通して使える技術や装置があるので、この共同研究でSiC LSIのプロセスが徐々に立ち上がってきている。フェニテックはSi LSIも手掛けていてLSIの配線などに関する技術も有しているので、頼もしいパートナーだ。
この研究の大きな意義は、デバイスパラメータを抽出して設計環境を整えることだ。それができれば、回路設計者が誰でもSiC LSIを設計できるようになる。「SiC LSIを作りたい」という事業者がすぐに参入できるところまで持っていくのが私たちの役割だ。
他には、科学研究費助成事業基盤研究(S)「人類のフロンティア拡大を支えるSiC極限環境エレクトロニクスの確立」、福島国際研究教育機構の「廃炉向け遠隔技術高度化及び宇宙分野への応用事業」などの枠組みで研究開発を行っている。ベースになっているのは初期に描いたビジョンだ。前述のフェニテックのほか、産業総合研究所の田中保宣氏、児島一聡氏、量子科学技術研究開発機構の大島武氏、武山昭憲氏、牧野高紘氏、自分の研究室メンバーなど、共同研究者にも恵まれた。
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