Microsoftの場合もMetaの場合も、IT機器の6割前後がNVIDIAへの支払い、つまりGPUによって占められている、というのが筆者の推定だが、「どうやって推定したのか」と疑問に思う方も多いだろう。以下が、筆者の推定の根拠である。
まずNVIDIAの売り上げからの推定である。NVIDIAにとってMicrosoftとMetaは1位、2位を争う上位顧客として認識されている。両社とも四半期で100億米ドル以上の金額をNVIDIAに支払っている、という推定は、NVIDIAのデータセンター向け売上高623億米ドルという実績を考えれば、十分に想定可能な金額である。実際にAIアクセラレータ「GB200」は単価が6〜7万米ドルと推定されており、GPU 1個あたりのシステム単価は10万米ドル強、という仮説を立ててみた。ちなみにMicrosoft向けの売上高が150億米ドルであれば、GB200は約23万個分、Meta向けの売上高が100億米ドルであれば、同15万個分、という計算になる。
次に、BOM分析に対する推定精度の向上である。筆者が代表を務めるグロスバーグでは電子機器メーカーの「定量的な原価情報」を元に、半導体を中心としたコストおよびスペックを分析し、各種電子機器のコストおよびスペックの推定精度を向上させる取り組みを行っている。
上図はMicrosoftやMetaが採用しているであろうGB200を搭載したAIサーバのコストおよびスペックを、筆者なりに推察したものである。グロスバーグでは現在、50種以上の電子機器を対象に同様の分析を進めている。実際に実機を入手して分析するわけではないので、コストやスペックの推定精度にはやや限界がある。だが、高価で高精度な分析までは必要としない、大体のコストやスペックが安価で情報入手できれば良い、というニーズにお応えすべく、このBOM分析の情報サービスを準備している。対象としては、今後AI機能が搭載されそうな電子機器を中心に、どのような半導体が搭載されて、どの程度のコストでどのようなスペックの帯域になりそうなのか、分析をご紹介する予定である。ご興味のある読者は、グロスバーグWebサイトにアクセスいただければ幸いである。
AIが本格的に普及しそうになっているのは、AIシステムの実現に必要な「学習」と「推論」のうち、「学習」をNVIDIAのGPUが実現化したから、といっても過言ではないだろう。これによって大手ITベンダー各社が「生成AI」を商品化した。「生成AI」は極めて汎用的で、しかも入出力がデジタルデータに限定されている。今後AIは、特定用途向けに、実際にモノを動かすような「フィジカルAI」へと発展することが期待される。自動運転やロボットの出現は、もうすぐそこまで来ているといって良いだろう。しかしその前に、もっと身近なところで、手軽なAIが実現するかもしれない。そんな可能性を意識しながら、「AIが搭載されるさまざまな電子機器」について、コストやスペックを推定し、その実現性について検証していきたいと考えている。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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