ことし2026年の半導体市場を占う意味で、筆者が注目すべきトピックを独断と偏見で10件ほどピックアップしてみた。
2024年、2025年と、世界の半導体市場は「AI一色」だったと言って良いだろう。それもデータセンターに需要が集中し、われわれが体験できるのは大手ITベンダーから提供される「生成AI」くらいである。一方でPC、スマホ、クルマなど、われわれの身の回りにある電子機器需要は盛り上がりを一向に見せない。この状況は、年が明けた2026年もあまり変わらないような気がする。しかし、2026年に注目すべきことは、よく考えてみるともっとたくさんありそうだ。ポジティブなこともネガティブなことも存在するが、ことし2026年を占う意味で、筆者が注目すべきトピックを10件ほどピックアップしてみた。あくまでも「筆者の独断と偏見」なので、その辺を踏まえてご覧いただきたい。
2026年1月にラスベガスで開催されたCESにおいてNVIDIAは、自動運転のプラットフォームを大々的に紹介し、Jensen Huang CEOは「10年以内に自動運転車が世界中を走り回るようになる」とぶち上げていた。NVIDIAは1年前のCES 2025ではロボットをメインテーマに取り上げ、未来を語っていた。だが、ことしは自動車がメインテーマだったようだ。なぜ2025年がロボットで2026年が自動車なのか、NVIDIAにはそれなりの理由があると思われるが「フィジカルAIの世界はもうすぐやってくるぞ」ということを主張しているように感じられる。現在大手ITベンダーが提供している「生成AI」はデジタルAIの代表的存在で、極めて汎用的である。生成AIもまだ発展途上段階にあるが、AIが本格的に普及するためには、自動運転とか、人間に代わって作業を行うロボットとか、遠隔医療とか、特定用途向けの、それも何かを動かす「フィジカルAI」の台頭が不可欠だろう。そのすべてをNVIDIAが牛耳るとは思えないが、AI推進の第一人者である同社が、CESでフィジカルAIを熱く語ることに意味がある。
そのNVIDIAが2026年は新製品「Rubin」の出荷を予定している。2024年のヒット商品「H100」の単価は3万〜3万5000米ドル、2025年のヒット商品「GB200」の単価は6万〜7万米ドルと推定されていた。果たして「Rubin」の単価はいくらなのか。10万〜12万米ドルという説が有力らしいが、これは出荷されたときのお楽しみだろう。
そのNVIDIAの製造を請け負うのがTSMCであり、この2社は「半導体業界最強のタッグ」といえるだろう。半導体受託製造(ファウンドリー)市場におけるTSMCのシェアは、2023年までは「50%超」という表現がよく使われていた。これでも十分圧倒的なシェアだが、2024年には「60%超」といわれるようになり、2025年にはついに「70%超」といわれるようになった。ファウンドリー事業を行っている会社は世界に何十社と存在するが、常に最先端プロセスを実現しているのはTSMCだけである。激化する微細化競争に追随できないファウンドリー企業は、直近2年以上にわたって売上高が横ばいにとどまっているのがほとんどである。特にAI関連に需要が集中する昨今、必要とされるのは最先端プロセスなのだ。
TSMCと競合すべく、Samsung Electronics、Intelの2社が最先端プロセスを追随しているが、歩留まりが改善できず、ほとんどの顧客がTSMCに集まってしまった。3nm、5nm、7nmといった最先端プロセスにおけるTSMCのシェアは90%を大きく超えているのが実情である。同社は2025年10〜12月に2nmプロセスの量産を立ち上げた。最初の顧客はAppleだと思われるが、iPhoneにはまだ2nmは採用されていない。本格的な採用は2026年からだろう。
2025年は米国政府、ソフトバンクグループ、そしてNVIDIAが出資することが話題を呼んだ。一見、Intelにとって朗報にも見えるが、これらの出資は「Intelの製造部門をどうするか」について一切言及していない。Intelは2024年9月の段階で「製造部門の分社、独立」という方針を発表しているにもかかわらず、この話が一向に具体化しないのである。
Intelの自己資本は約1000億米ドルあるが、2024年度の決算において製造部門で約200億米ドルの赤字を計上した。Intelの財務体力はまだ健全だが、このような巨額の赤字を計上していては、さすがのIntelも長くは続かない。単純計算では、5年で破綻してしまうのだ。2026年中に結論が出るとは思えないが、「誰が出資、経営するのか」という議論は過熱する可能性が高い。
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