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イラン戦争の長期化が半導体業界に及ぼす深刻な影響ヘリウムと臭素に供給リスク(2/2 ページ)

» 2026年03月18日 11時00分 公開
[Majeed AhmadEE Times]
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シリコンウエハー冷却用のヘリウム、現実的な代替はなし

 ヘリウムは、半導体製造においてシリコンウエハーの冷却に使われ、現実的な代替材料は存在しないと考えられている。製造装置の温度を安定した状態に維持することに加え、漏れ検知にも広く使われる。また、フォトリソグラフィのプロセスでも重要な役割を担う。

 SamsungとSK hynixの本拠地である韓国は、ヘリウム不足による深刻な影響にさらされる可能性がある。韓国が2025年に輸入したヘリウム全体の64.7%がカタール産だったという。ただしSK hynixは、「ヘリウムの調達先を多様化し、十分な在庫を確保している」と主張している。

 また、日本のヘリウムのトップサプライヤーである岩谷産業も、半導体メーカーをはじめとする顧客向けに安定供給を維持できると主張している。その理由として、ヘリウムは米国から調達していることや、米国と日本の両国に備蓄を確保していることなどを挙げる。カナダと米国も、カタールと並ぶヘリウムの最大供給国だ。

 次に、半導体製造におけるもう1つの重要材料である臭素も、中東紛争による重大な供給リスクに直面している。臭素は、回路形成/半導体検査装置に使われる。

 世界全体の臭素の約3分の2が、イスラエルとヨルダンから供給されている。韓国は現在、臭素全体の90%をイスラエルから調達しているという。SemiAnalysisのWang氏は「世界の半導体メーカーは、このような重要材料の調達方法を調整する必要に迫られるだろう」と述べる。

AIブームに「深刻な影響」? 3つの懸念

 Amazonのアラブ首長国連邦(UAE)のデータセンターがイランのドローン攻撃を受けたことが大きく報じられているが、それよりもはるかに重大な問題が目の前にあることが見過ごされてしまっている。

 まず1つ目の問題は、もしイランがイスラエルやカタール、UAEのデータセンターを攻撃した場合、AIチップの需要に大きな影響が及ぶ可能性があるという点だ。特に現在では、MicrosoftやNVIDIAのような米国のテクノロジー大手は、UAEをAIデータセンター向けの地域拠点として位置付けているということもある。

 2つ目は、エネルギーコストの上昇によってAIデータセンターの建設が遅れ、そのために半導体需要が弱まる可能性があるという問題だ。AIデータセンターの消費電力量は、既存のデータセンターの約3〜5倍に達する。石油価格の高騰によってAIデータセンターの運用コストが大幅に上昇する可能性がある。その結果、ハイパースケールデータセンターのTCO(Total Cost of Ownership)が急激に上昇し、世界的なAIインフラの展開が脅かされることになるだろう。

 そして最後の3つ目が、エネルギーコストは半導体製造において重要な要素であるという点だ。クリーンルームは常に電力と冷却を必要とするため、半導体メーカーは世界のエネルギー価格の変動による影響も受けやすい。

 現在のところ、半導体製造に直ちに影響が及ぶかどうかは分からない。というのも、TSMCのような大手半導体メーカーは一般的に、短期的な供給混乱を乗り切ることができるよう、さまざまなサプライヤーを組み合わせ、特殊ガスや化学薬品を備蓄しているからだ。しかし、もし今回の戦争が長期化すれば、半導体サプライチェーンへの圧力はさらに強まっていくだろう。

 TSMCは現在、カタールのヘリウム生産拠点の停止によって顕著な影響が及ぶとは考えていないようだが、情勢を監視していることは認めている。また別の大手ファウンドリーGlobalFoundriesも、現地のサプライヤーや顧客企業、パートナー各社と直接コンタクトを取り、緩和計画を策定していることを明らかにした。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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