Appleの変革におけるもう1つの重要な要素として挙げられるのが、自社半導体開発だ。Ternus氏の主な業績の1つは、Appleの社内半導体チームとの連携によって、MacのIntel製プロセッサを自社製半導体に置き換えたことだ。この半導体はエネルギー効率の向上を実現し、Macの売上高を急成長させる結果となった。
現在Appleのカスタム半導体/センサー設計の責任者であるJohny Srouji氏は、Chief Hardware Officer(最高ハードウェア責任者)に任命された。同氏は、1990年から2005年までIntelで勤務した後、2008年にAppleに入社し、Apple初のSoC(System on Chip)「A4」の開発を主導した。最終的に、Appleが世界で最も革新的な半導体エンジニアチームを構築する上で貢献した人物となった。
Appleは自社製半導体によって軽量ノートPC「MacBook Air」をより薄型化しながらバッテリー駆動時間も18時間と長くし、高性能ノートPC「MacBook Pro」に匹敵する性能を実現した。Ternus氏は、こうした重要技術の内製化に大きな影響を与えた存在である。
さらに同氏は、iPad Proの半導体を「M1」へ切り替える際も重要な役割を担った。iPad Proに使われていたM1が、Macと同等の性能を提供すると主張したのだ。M1では、8コアCPU設計により、低消費電力でありながら高速パフォーマンスを実現し、8コアGPUによってグラフィックスの高速化も実現した。
Steve Jobs氏がカリスマ的かつ情熱的なリーダーシップスタイルを取っていたのに対し、Cook氏は、冷静な実行力と規律ある運営によって、企業史上最も効率的な技術エコシステムの構築を実現した。一方でTernus氏は、Apple社内でその優れたエンジニアリング手腕が広く知られている。Cook氏はTernus氏について「エンジニアマインドやイノベーター魂だけでなく、誠実さと敬意をもって主導していく心も兼ね備えている」と称賛する。
Cook氏は経営の達人だったが、Ternus氏の在任期間には、エンジニアリング中心の製品イノベーションへと焦点が切り替わり、折りたたみ可能なスマートフォンやスマートグラス、仮想現実(VR)デバイス、AIピンなどの新しいデバイスが投入される可能性が高い。その一方でAppleは、AI分野での体制を整えていく必要がある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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