筆者としては「HBMの供給増によってNVIDIAの売り上げが上振れたのではないか」と分析している。NVIDIAの主力製品であるBlackwellシリーズ向けには容量192Gバイトクラスの「HBM3E」が使用されており、SK Hynixを筆頭にMicron Technology、Samsung Electronicsが供給量を増強している。特に2026年1〜2月のDRAMの平均単価の上昇が激しかった。通常のDRAMの値上がりも多く見られたが、大手DRAMメーカー各社が通常のDRAMよりもビット売価が5〜10倍と高価なHBM3Eの増産を優先したことにより、平均単価が押し上げられた、と筆者はみている。
図2はNVIDIAの用途別売り上げの推移を示したものである。NVIDIAは今四半期より開示方法を変更して、データセンタ向けを「Hyperscale」と「AI Clouds, Industrial & Enterprise」に分け、従来の車載やゲーム機向けなどを「Edge Computing」としてまとめた。Hyperscaleの中にはMicrosoft、Meta、Google、Amazonなどに向けた売り上げが含まれるが、それ以外のクラウド/エンタープライズ向けも純増している様子がうかがえる。
今回の決算発表では、実績が上振れたこともさることながら、今後の見通しについてさまざまな説明が行われた。例えば「エージェント型AI」「AIファクトリー」「Vera CPU」などについての主張が印象的であった。
「エージェント型AI」とは、AIがツールを呼び出し、タスクを自律的に実行するAIのことで、これがNVIDIAの売り上げを拡大させていく、という主張である。従来の「一問一答型」のチャット形式とは異なり、目的を与えると自力で計画を立てながら実行、修正を行うAIを指す。
「AIファクトリー」とは、AIを生成するための工場のことで、NVIDIAが提供するAIプラットフォームそのもの、と言い換えることができるだろう。
「Vera CPU」とはエージェント型AIに必要なCPUのことで、従来型CPUの性能では処理できない新型のCPUと位置付けている。NVIDIAは最初のCPUとして「Vera Rubin」を2026年7月ごろに出荷すると計画している。
ちなみにBlackwellの次のGPUとして期待されている「Rubin」の出荷も2026年7月ごろのようである。RubinはBlackwellに比べて推論機能が大幅に強化されているそうだ。今後AIシステムの比重が「学習」から「推論」へとシフトしようとする中、その推論でもNVIDIAのGPUが圧倒的な実績を上げるための戦略商品、という位置付けだろう。搭載されるHBMも現行の「HBM3E」から「HBM4」へと移り変わる。これまで1024本だったデータI/Oピン数が、2倍の2048本になり、最先端パッケージングの難易度も上がることが予想される。
筆者には、今回の説明だけではNVIDIAが目指しているAIの全体像がなかなかつかめない、というのが正直なところである。しかしNVIDIAはハイパースケーラー各社と協業しながら、現状のAIシステムの問題や課題はどこになるか、どのような手段でいつまでにクリアするか、将来的に目指すべきAIシステムはどうあるべきかなど、自力で道を切り開こうとしていることは十分に理解できた。
実質的な競合が存在しない中、NVIDIAがけん引役としてAI市場を切り開こうと続ける限り、半導体市場もAI市場も、NVIDIAを中心として回り続けることになりそうだ。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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