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スズ系ペロブスカイト太陽電池で高い効率と耐久性光吸収層に有機分子を添加

上智大学と物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、スズ系ペロブスカイト太陽電池で、高い変換効率と耐久性を両立させることに成功した。光吸収層に有機分子を添加する手法を開発したことにより、鉛を使わない安全な太陽電池を実現できるという。

» 2026年09月04日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

光電変換効率は9.07%に向上、100日後も約85%の性能を維持

 上智大学と物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは2026年9月、スズ系ペロブスカイト太陽電池で、高い変換効率と耐久性を両立させることに成功したと発表した。光吸収層に有機分子を添加する手法を開発したことによって、鉛を使わない安全な太陽電池を実現できるという。

 ペロブスカイト太陽電池は、薄くて柔軟性に優れ軽量など、多くの特長を備えている。ただ、高い光電変換効率を実現するため、現在はペロブスカイト層(光吸収層)に鉛が使われている。毒性を下げるため代替元素としてスズが検討されているものの、効率と耐久性を両立させるのが難しかったという。

 こうした中で、有機分子の層と無機の層を交互に積み重ねた「擬二次元構造」を光吸収層に用いる方法なども検討されている。しかし、有機分子の層が電気を通しにくいといったこともあり、擬二次結晶の薄膜を形成する方法が課題となっていた。

 研究グループは今回、擬二次元構造のペロブスカイト結晶を成長させる際に、有機分子の「2-アミノベンゾチアゾール(2-ABZ)」を添加材として用いた。窒素と硫黄というヘテロ原子を併せ持つ2-ABZを添加することで結晶がゆっくり成長し、隙間のない高品質の膜を形成できた。

 この膜を光吸収層とするスズ系ペロブスカイト太陽電池を試作した。2-ABZ添加した素子は、開放電圧702.93mV、短絡電流密度18.35mA/cm2、曲線因子70.29%、光電変換効率9.07%となった。これに対し添加していない素子は626.20mV、15.19mA/cm2、69.39%、6.60%であった。これらの結果から、開放電圧と短絡電流密度は大きく改善したことが分かる。

 新たな手法により特性が改善した理由を調べた。2-ABZを添加したことで価電子帯と伝導帯がそれぞれ0.23eV、0.22eV移動し、隣り合う正孔輸送層とのズレ(エネルギー準位の差)が小さくなり、電子輸送層とのズレも縮まった。この結果、開放電圧が上昇した。

 また、酸化によって生じる4価のスズの割合は10%から8.5%へ、ヨウ化物イオンやその関連種の割合は27%から14.6%にそれぞれ減少した。同時に、ヨウ化物イオンと窒素に由来するピークの位置が移動した。

 このことから、2-ABZのアミノ基とヨウ化物イオンの間には水素結合が形成され、ヨウ素をペロブスカイトの構造につなぎとめていることが分かった。また、電子輸送層の表面に達したヨウ素化物イオンの量が、2-ABZを添加した素子では大幅に減少し、ヨウ化物イオンの移動を抑えていることを確認した。

 耐久性についても調べた。封止していない素子を大気中で100日間保管した。この結果、2-ABZを添加した素子は、84.94%の効率を保持できたが、2-ABZを添加していない素子は48.95%まで下がった。疑似太陽光を当てながら最大電力点で連続発電させる試験でも、2-ABZ添加の素子は10時間後に初期効率の88.9%を維持できた。これに対し、2-ABZ無添加の素子は1時間でほぼ発電しなくなったという。

 今回の研究成果は、上智大学理工学部物質生命理工学科の竹岡裕子教授、Jorim Okoth Obila特別研究員(当時)、物質・材料研究機構(NIMS)エネルギー・環境材料研究センターの白井康裕グループリーダー、柳田真利主任研究員らによるものだ。

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