京都大学は、「SCSCケーブル」と呼ぶ高温超伝導集合導体と、これをコイル化するための「巻き線技術」を開発した。超伝導モーターやフュージョンエネルギー発電(核融合発電)などへの応用に期待する。
京都大学大学院工学研究科の雨宮尚之教授らは2026年9月、「SCSCケーブル」と呼ぶ高温超伝導集合導体と、これをコイル化するための「巻き線技術」を開発したと発表した。超伝導モーターやフュージョンエネルギー発電(核融合発電)などへの応用に期待する。
高温超伝導線は、電気抵抗がゼロで電流を極めて高い電流密度で流すことができる。このため、モーターの小型軽量化や省エネ化に貢献する。フュージョンエネルギー発電においても、超高磁界を発生する超伝導コイルへの応用が期待されている。ところが従来の高温超伝導線では、「交流損失の発生」や「コイル化するための柔軟性に欠ける」など、課題もあった。
雨宮教授らはこれまで、結合電流と呼ばれる「うず電流」を抑制し、交流損失を低減した「SCSCケーブル」を開発してきた。テープ状の高温超伝導線の中の超伝導薄膜を細いフィラメントに分割し、交流損失を小さくしてきた。フィラメント同士は銅めっきの層で電気的に接続した。こうして作製した銅めっきマルチフィラメント薄膜高温超伝導線を、直径3mm以下という金属コアの周りへらせん状に巻きつけるなどして、これまでの課題を解決してきた。
SCSCケーブルの実用化に向けては、金属コアの周りに多くの高温超伝導線を巻き付けるための「多層化技術」と、長いケーブルを作るための「長尺化技術」を開発する必要があるという。
そこで今回、合計24本の銅めっきマルチフィラメント高温超伝導線を、金属コアの周りへ8層に渡って巻き付けたSCSCケーブルを試作した。多層化技術によって理論上は数キロアンペアの電流を流すことができる。高温超伝導線の種類を変えれば、フュージョンエネルギー発電の超伝導コイルにも応用できる水準だという。長尺化については、ケーブリング装置の改良などによって、長さ45mのSCSCケーブルを試作することに成功した。これだけの長さがあれば、航空機の電気推進用モーターなどに適用できるとみている。
SCSCケーブルを機器に実装するには円形などにコイルを巻く必要がある。今回の実験では、半径30mmの円形巻き芯を用い、SCSCケーブルを5層に渡って33巻きした円形コイルや、半径25mmで3巻きした立体形状の鞍型コイルを作製した。そして、理論予測とほぼ同じ電流を流すことに成功した。
さらに、4mm幅の超伝導線からなるケーブルで巻いた円形コイルの交流損失予測値に対し、試作した33巻き円形コイルの交流損失実測値は、約10分の1に低減できることが分かった。
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