MEMSセンサーを手掛ける米Kionix(カイオニクス)社は、タッピング操作を検出する独自のアルゴリズムを搭載した3軸MEMS加速度センサー「KXTF9」を発売した。携帯型電子機器に組み込めば、コストが高いタッチ・スクリーンを利用せずに、12通りのタッピング操作が可能になるという。
今回の3軸加速度センサーには、「Directional Tap/Double-Tap」と呼ぶ同社独自のアルゴリズムが搭載されており、携帯型電子機器の筐体の6つの面それぞれに対するシングル・タッピングとダブル・タッピングを識別できる。同社でセールス&マーケティング担当バイス・プレジデントを務めるEric Eisenhut氏によれると、このアルゴリズムは、「機器の筐体の6つの面、すなわち前面、背面、右側、左側、上面、底面のうち、エンド・ユーザーがいずれの方向から機器をタッピングしたのかを感知できる」という。
同社は、6方向すべてについてエンド・ユーザーのタッピング・パターンの特性を抽出し、3軸加速度センサー上で動作するタッピング・パターン検出アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムでは、タッピングの向きと、シングル・タッピングかダブル・タッピングかを識別できる。このため携帯型電子機器に組み込めば、この加速度センサーが出力する情報を基に、エンド・ユーザーのタッピング操作に対応した12通りの動作を実現できるという。
Eisenhut氏は、「このアルゴリズムは、携帯電話や携帯音楽プレーヤなどの民生機器においてまったく新しいユーザー・インターフェースを可能にする」と述べている。例えば、携帯電話機に適用すれば、電話が着信した際にユーザーが前面をシングル・タッピングすると着信音が消え、ダブル・タッピングすると留守番電話に切り替わるといったインターフェースが可能になる。コストが高いタッチ・スクリーンを搭載する必要がなくなるという。
ただし同社は、タッチ・スクリーンを備えた携帯電話機や音楽プレーヤにも応用できるとしている。例えば、従来のメニュー・バーの代わりに、ユーザーはタッピング操作で12通りのメニューを選択できるようになる。
同社によれば、携帯電話きではすでに加速度センサーの採用が進んでおり、ディスプレイの縦横表示を自動的に切り替える用途や落下検出のほか、移動時に電源をオンして非移動時にはスタンバイ・モードに切り替えるといった機能に利用されているという。
Kionix社は現在、健康管理機器など市場規模が拡大している分野に向けて、専用のアルゴリズムを新たに開発中だという。また加速度センサーやジャイロ(角速度)・センサー、磁気センサーの新型品も設計しており、単一の機器にこれら3種類のセンサーすべてを搭載するような用途に向けるとしている。
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