米Qualcomm(クアルコム)社の重役が述べたところによると、同社は、携帯型情報機器向けプロセッサ「Snapdragon」シリーズのデュアルコア(プロセッサコアを2つ備える)品「QSD8672」の出荷を、2010年後半に延期した。QSD8672は、当初2009年にサンプル出荷を予定していたもので、スマートブック(英ARM社のプロセッサコアを搭載したコンピュータ)向けの品種だ。
QSD8672は、プロセッサコア「Scorpion」を2つ統合している。ScorpionはARM社のプロセッサコア「Cortex-A8」を基にしたもので、ARM社からアーキテクチャライセンスを取得しているQualcomm社がマイクロアーキテクチャを改良したものである。当初QSD8672は、Snapdragonシリーズの第3世代品の第一弾として登場するはずだった。
Qualcomm社は、QSD8672の開発計画を2008年11月に発表している。その際に、45nm製造技術を適用することや、動作周波数が最大1.5GHzに達するということ、そして2009年後半にサンプル出荷を予定していることなどを明らかにしていた。
ところが、実際にQualcomm社がSnapdragonシリーズのはじめてのデュアルコア品としてサンプル出荷したのは、スマートフォン向けの「MSM8260」と「MSM8660」だった。同社はMSM8260とMSM8660のサンプル出荷開始を2010年6月初旬に発表したが、これも当初の予定(2009年第4四半期)よりも遅れている。そして、これらのデュアルコア・プロセッサも、45nm製造技術を適用している。動作周波数は最大で1.2GHzだ。
Qualcomm社のQCT部門コンピュータアンドコンシューマープロダクトグループで、プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントを務めるMark Frankel氏は、「MSMシリーズはスマートフォン市場に向けたものであり、QSDシリーズはスマートブック向けである」とそれぞれのプロセッサの想定用途を説明した、「ただし、QSDシリーズを搭載したスマートフォンや、MSMシリーズを搭載したスマートブックが、今後絶対に登場しないというわけではない」と述べた。
Frankel氏は、「Qualcomm社は、QSD8672の開発の進行中に、その優先事項を変更した」と説明した上で、「QSD8672の開発に着手したころ、スマートブックの市場は黎明期にあった。その後、社内で開発における優先順位やその計画を幾らか変更することになり、QSD8672と、ほかのSnapdragonシリーズのプロセッサとの間のソフトウエア互換性をさらに高めるという方針も改めて決定した。その結果、デュアルコアのMSMシリーズのサンプル出荷を、QSD8672よりも優先させることになった」と述べた。
Frankel氏によると、QSD8672のサンプル出荷は2010年後半の予定だ。同氏は、「サンプル出荷開始の期日は決定しており、顧客企業には既に通達済みだ」と述べた。
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