(5)式の「I1/Vt」は本連載の第5回にも登場した通り、エミッタ接地増幅回路の利得を決める計算式です。
差動対は、2つのトランジスタの半分だけを見ると、エミッタ接地回路と同じように考えることができます。(5)式に1/2が付いているのは、反対側(負荷抵抗Rc2の側)のトランジスタに流れるI2の効果「I2/Vt」が影響しているためです。
片側のトランジスタのみに信号を入れたとき、信号と入れたのと逆のトランジスタの電流も、入力信号に応じて変化します。I1 とI2の総和は一定ですので、I1が変わると、当然I2も変化します。このため、(5)式の利得の計算式に「1/2」が付くことになります。図3のように、Q1とQ2のエミッタにそれぞれ等価的に抵抗が入っていると考えると分かりやすいと思います。
また、ΔVin=0とは、差動対がバランスしていることを意味します。2つのトランジスタがバランスすれば、コレクタ電流が同じだけ、双方のトランジスタに流れ、このときに利得は最大になります。
もしバランスが崩れてしまうと、どちらかのコレクタ電流が増え、もう片側は減ります。コレクタ電流が減る側のトランジスタは、利得が減少するのは当たり前なのですが、実はコレクタ電流が増えた側のトランジスタも利得が減ってしまいます。なぜなら、反対のトランジスタの電流が減るので、等価的なエミッタ抵抗(図3のRe1またはRe2)が増えてしまうからです。
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