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信号を増幅する「光アンテナ」、米大学が発表無線通信技術 アンテナ設計

米国のライス大学は、光アンテナで信号を100万倍以上に増幅することに成功したと発表した。レーザーを使って、サブナノメートルの間隔で配置した金属電極の間に量子トンネル効果を発生させるという。

» 2010年09月27日 15時30分 公開
[R. Colin Johnson,EE Times]

 米国のライス大学は、光アンテナで信号を100万倍以上に増幅することに成功したと発表した。レーザーを使って、サブナノメートルの間隔で配置した金属電極の間に量子トンネル効果を発生させるという。同大の研究者は今回、単分子センサーやそのほかの高度な非線形光学アプリケーションの実現を可能にする光アンテナを、高い精度でキャラクタリゼーションしたと説明している。

 ライス大学のDoug Natelson教授は、「一般にアンテナとは、(電磁波の)放射を受けて電圧の振動を生成するような金属の構造体である。われわれの研究では、電磁波として光(具体的には785nmの波長光)を使う。この光波によって、小型の金属電極中の電子がかき回され、その結果としてナノギャップにかかる電圧が変化する。従って、先の定義に照らし合わせれば、この素子も『アンテナ』だといえる。ただし電波用のアンテナではなく、光専用のアンテナだ」と述べている。

 この効果に基づくセンサーは、サブナノギャップ電極間の放射強度を利用することで、単分子さえも認識できるという。ライス大学は、この放射強度が「入射レーザーからの放射強度に比べて、数十万倍から数百万倍も高くなる」(Natelson教授)と説明する。「例えば、近接して配置した金属ナノ粒子は、粒子間ギャップの電磁場を増大させ、単分子をラマン分光で解析するために使われている」(同氏)。

 近接して配置した金属電極は、光アンテナとして振る舞う。電極中の電子がレーザーによって励起され、プラズモン(自由電子が集団的に振動する擬似粒子)を発生させ、そのプラズモンのエバネッセント波が入射光の数千倍の強度になるからだ。ただこれまでは、この電磁場の計測やキャラクタリゼーションは非常に困難だった。今回、ライス大学のNatelson教授と博士課程の学生であるDan Ward氏が、光アンテナ上に形成したサブナノスケール電極間の電磁場を、比較的容易に計測できる方法を開発した。

図1 図1 光を捕捉して増幅する実験で使用したナノギャップ素子の金(Au)パターンの先端部分
走査型電子顕微鏡で撮影した画像である。出典:ライス大学 Natelson Lab

 同大学の研究者らは、電極を絶対温度80K(−193℃)まで冷却し、電気的に駆動される低周波の電流と、光学的に駆動される高周波の電流を同時に測定することで、電圧増幅率を推定した。

 この研究プロジェクトは、ライス大学が、ドイツのカールスルーエ工科大学(KIT)やスペインのマドリッド・オートノマ大学と共同で取り組んだ。プロジェクトの資金は、ロバート・ウェルチ財団や、ロッキード・マーチン先端ナノテクノロジー研究センター(LANCER)、ドイツ学術振興協会(DFG)、バーデン・ブルテンベルグ財団(Baden-Wurttemberg Stiftun)、欧州Bio-Inspired Approaches for Molecular Electronics(BIMORE)、スペイン科学イノベーション省(MICINN)などが提供した。

図2 図2 金(Au)製のサブナノメートル電極対で、レーザーからの光をプラズモンが収束させている様子(イメージ図)
出典:ライス大学 Natelson Lab

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