世界市場では知名度が比較的低い日本の半導体メーカーが、デジタルシグナルコントローラ(DSC)でマイクロチップ テクノロジーやテキサス・インスツルメンツ(TI)などの強豪メーカーに勝負を挑もうとしている。
その半導体メーカーとは、アナログ/ミックスドシグナルやディスクリート半導体を手掛ける新日本無線だ。同社は今月、2010年7月に発表していたデジタルシグナルコントローラ「NJU20010」の量産を開始する予定だ。同社のゼネラルマネジャーを務める松本正一氏は、「NJU20010は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)と16ビットのマイコン・コアなどを1枚のチップに集積しており、デジタル制御電源向けの統合型デジタルシグナルコントローラだ」と説明する。
新日本無線の主要製品であるアナログ/ミックスドシグナル半導体は、浮き沈みの激しい市場である。半導体市場は、2009年に低迷したが、2010年第1四半期に好転した。アナログ半導体も非常に好調で、大幅な需要増により、供給不足やリードタイムの遅延が発生した。
アナログ半導体は、特定の製品に関しては、現在もなお供給不足が続いている。ただし同社の松本氏はEE Timesの取材に対し、「(アナログやディスクリート半導体は)出荷量はまだ多いものの、平均販売価格は下落傾向にある」と述べた。
新日本無線は1959年に設立され、リニアテクノロジーやナショナル セミコンダクター、NXPセミコンダクターズ、マイクロチップ テクノロジー、ローム、STマイクロエレクトロニクス、TIなどの半導体メーカーを競合としている。新日本無線は4インチと5インチのファブを運営し、0.8μm以前の世代のCMOS/バイポーラ/BCDプロセス技術を適用した半導体の製造を手掛けている。出荷量の20%〜25%は、韓国の半導体ファウンドリであるDongbu HiTekなど、4つのファウンドリ企業に外部委託しているという。
新日本無線は、最新の製品であるデジタルシグナルコントローラのNJU20010で、TIやマイクロチップ テクノロジーなど、この分野の強豪メーカーに戦いを挑むことになる。
NJU20010は、アナログ技術では実現できないアプリケーションをサポートする製品だという。新日本無線は、「デジタル制御電源技術は、従来のスイッチングレギュレータで主に採用されてきたアナログ制御電源よりも高い性能を提供できる」と主張する。
NJU20010は、DSPとマイコンの機能を統合したハイブリッド型の16ビット固定小数点DSPコア「Ximo16A」を搭載した。6ステージのインオーダパイプラインと、1つのハーバードアーキテクチャバスを備え、最大62.5MHzのクロック周波数で動作する。このほか分解能が12ビットで最大2Mサンプル/秒動作の逐次比較型A-D変換器も集積した。電源電圧は3.3Vと1.8Vの2系統。2010年10月中に量産を開始する予定だ。
新日本無線はこのほかにも最近、スピーカーシステムの信号処理に向けたオーディオ用PWMモジュレータ内蔵DSP「NJU26060V」の量産に入った。NJU26060Vは、オーディオ用24ビット固定小数点DSPで、DSPコアの周辺に3入力1出力のセレクタや、サンプリングレートコンバータ、PWMモジュレータ、メモリ、デジタルインターフェイスなどを集積している。
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