宅内にあるさまざまなエレクトロニクス機器をネットワーク接続し、電力の消費量を監視・制御する、宅内の電力管理システム「HEMS(Home Energy Management System)」は、最終的な形がまだ見えていない。HEMSを構築する要素の1つである無線通信の分野でも、各種アプリケーションとの連携や、組み込みの容易性を訴求した提案が相次いでいる。
宅内にあるさまざまなエレクトロニクス機器をネットワーク接続し、電力の消費量を監視・制御する、宅内の電力管理システム「HEMS(Home Energy Management System)」は、最終的な形がまだ見えていない。HEMSを構築する要素の1つである無線通信の分野でも、各種アプリケーションとの連携や、組み込みの容易性を訴求した提案が相次いでいる。
HEMSは、再生可能エネルギーの利用を拡大しようという機運を背景に、最近注目を集める「スマートグリッド」の中核技術でもある(図1)。情報通信技術を活用して、電力網(グリッド)を賢く進化させるスマートグリッドの実現には、各家庭の消費電力の推移を把握したり、制御したりするHEMSの構築が欠かせない。HEMSにおいて、各エレクトロニクス機器から情報を収集する手段として、無線通信技術が活躍する。
さらに将来を見通すと、無線通信は、すべてのエレクトロニクス機器がインターネットに接続する、いわゆる「モノのインターネット(IoT: Internet of Things)」と呼ぶ新たな概念を実現する要素技術でもある。
ただし、課題もある。白物家電やOA機器、デジタル家電、照明といったさまざまなエレクトロニクス機器に無線通信機能を新たに搭載するには、これまでと違った配慮が必要だ。特に重要なのは、組み込みの容易性や、利用者に新たな利便性を提供する各種アプリケーションとの連携である。
例えば、機器の既存のシステム構成や、汎用プロセッサの処理能力/メモリ容量を大きく変えずに無線機能を搭載できることが、無線機能の搭載を後押しする要因になる。さらに、これまで無線を搭載していなかった機器に新たに無線機能を搭載するとき、利用者にどのような有益なサービスを提供するかという視点が、普及させる上で重要だろう。
以下に、各種アプリケーションとの連携や、組み込みの容易性を訴求した3種類の提案を紹介する。まず、無線通信モジュールと利用者向けのアプリケーションの連携を強く意識したハードウエアとソフトウエアを提供するPeople Powerの取り組みを解説する。
組み込みが容易であることをアピールした無線LAN(Wi-Fi)チップも複数登場している。一例として、組み込み向けWi-Fiを手掛けるGain Spanの取り組みを紹介し、その後、ZigBeeの動向を解説する。ZigBeeは、スマートグリッドやHEMSに使う無線通信技術の有力な候補の1つである。距離無線通信の業界団体である「ZigBee Alliance」では、機器への組み込みを促すことを目的に、宅内のスマート化を狙ったプロファイル(仕様)を次々と打ち出している。
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