ZigBeeも、前述のように、スマートグリッドやHEMSに使う無線通信技術の有力な候補の1つである。距離無線通信の業界団体である「ZigBee Alliance」では、メーター検針や電力管理に向けた「Smart Energy Profile 1.0」や、宅内の無線ネットワークに向けた「Home Automation」といったプロファイルをすでに用意している。さらに、Smart Energy Profile 1.0を進化させた「Smart Energy Profile 2.0」や、エネルギーハーベスティングに向けたプロファイル「Green Power」の策定作業を進めている。
NXPセミコンダクターズは、2010年11月に開催した事業説明会の中で、「家電やLED照明の電力監視や、スマートグリッドの市場で、将来的にデファクト(事実上の標準)になるであろう、重要な要素技術がZigBeeだ」(同社のハイパフォーマンス・ミクスドシグナル事業部で統括部長を務める国吉和哉氏、図7)と語った。
同社は、IEEE 802.15.4を採用した独自プロトコル「JenNET」やZigBeeに対応した無線チップを手掛ける「Jennic」を2010年7月に買収した。現在提供している代表製品が、IEEE 802.15.4規格に準拠したRFトランシーバ回路と32ビットマイコン、周辺回路を1チップに集積した「JN5148」である(図8)。送信時の消費電流は15mA、受信時の消費電流は17.5mAと小さい。
2011年3月には、回路構成を単純化することで、価格を抑えた「JN5142」のサンプル出荷を開始する予定である。宅内の無線ネットワークを構成する機器や、自己発電型スイッチ(エネルギーハーベスティング機器)への適用を想定している。機械式スイッチを押し込む動作1回分で、3パケットを送れるほど、消費電力は小さいという。
さらに、同社のハイパフォーマンス・ミクスドシグナル事業部のLow Power RFマネージャであるAdrian Ward氏によれば、2011年後半には「ZigBee IP」と呼ぶ新技術に対応したプロトコルスタックを提供できる見込みだという。ZigBee IPとは、ZigBee規格のネットワーク層にIP(インターネットプロトコル)を採用したもの。これが実現すれば、Wi-Fiとの連携や、インターネットへの接続もこれまでに比べて容易になる。
現在、ZigBee IPの策定作業が続いている状況だ。ZigBeeの特徴の1つでもあるメッシュ型の無線ネットワークを構築するための「ルーティング技術」をいかに実現するかが、「ホットな議論の1つ」(同氏)だという。ただ、「ROLL(Ruting over Low Power Lossy Networks)」と呼ぶ方法が実現技術の候補に挙がっており、議論は収束する方向に進んでいるようだ。
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