フリースケール・セミコンダクター・ジャパンは、通信処理プロセッサとDSP、ハードウエアアクセラレータを1チップに集積した無線基地局向けプロセッサ製品群「QorIQ Qonverge」を発表した。
無線基地局のすべての機能を1つのチップに・・・。
フリースケール・セミコンダクター・ジャパンは、通信処理プロセッサとDSP、ハードウエアアクセラレータを1チップに集積した無線基地局向けプロセッサ製品群「QorIQ Qonverge」を発表した。
チップ開発のコンセプトは、「Basestation on a chip(基地局機能を1つのチップに)」というもの。従来は一般に、無線基地局のベースバンド処理部を実現するには、通信処理プロセッサとDSP、FPGAという3つのチップが必要だった。今回、これらの機能を1チップに搭載した。3つのチップの機能を1チップにまとめたことで、無線基地局の部品コストと消費電力を大幅に減らせると主張する。
「通信処理プロセッサコアとDSPコアを集積した、ヘテロジニアス型の無線基地局向けマルチコアプロセッサは業界初。『Basestation on a chip』という新たなコンセプトを提案したい」(同社のネットワーク事業本部 事業本部長を務める伊南恒志氏)。
QorIQ Qonvergeの特徴は、主に2つある。1つは、「フェムトセル」や「ピコセル」と呼ぶ個人用や企業用の小型基地局から、「メトロセル」や「マクロセル」と呼ぶ規模の大きな基地局まで、同じアーキテクチャのチップで対応できること。QorIQ Qonvergeは、Power Architectureのプロセッサコアと、「StarCore」と呼ぶDSPコア、マルチモード対応のベースバンドアクセラレータを集積している。セルの規模に合わせてコア数を変えるなどして、セルの規模ごとに最適化した品種を用意する。
もう1つの特徴は、「GSM」や「LTE-FDD/TDD」、「LTE-Advanced」、「HSPA+」、「TD-SCDMA」、「WiMAX」といったさまざまな無線通信方式に対応できること。QorIQ Qonvergeでは、ハードウエアアクセラレータとDSPが、ベースバンド処理を担当している。例えば、アクセラレータに複数の無線通信方式に共通で必要な処理を担当させつつ、パラメータを調整することで柔軟性を持たせる仕組みも搭載した。この他、それぞれの無線通信方式に対応したソフトウエアも用意する。
まず、2011年下半期にフェムトセルを対象にした「PSC9130/PSC9131」と、ピコセルを対象にした「PSC9132」の出荷を開始する。ソフトウエアやRFハードウエアを組み合わせた開発プラットフォーム「P2020-MSC8156」も提供する。規模の大きな基地局(メトロセルやマクロセル)を対象にした品種は、2012年早期にサンプル品の提供を始める予定である。
同社は、通信業界が直面している課題を3つ挙げた。1つ目は、モバイル機器の普及を背景に、トラフィックデータが指数関数的に増加していること。2つ目は、LTEサービスの開始に向けた新規設備の導入と、既存の3G用設備の更新を同時に進める必要があること。3つ目は、無線ネットワークのアーキテクチャが変わりつつあること。例えば、音声からデータへトラフィックが変わってきていることや、フェムトセルやピコセルが登場したことなどである。QorIQ Qonvergeは、これらの課題を解決することを目的に開発された。
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