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低分子物質の計測も可能に、日本電波が水晶利用の解析装置を強化水晶デバイス

日本電波工業は、同社のバイオや医療、食品の分野に向けた解析装置「NAPiCOS」において、新たな計測用途に向けた2つの水晶センサーを開発した。

» 2011年03月10日 17時10分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 日本電波工業は、同社のバイオや医療、食品の分野に向けた解析装置「NAPiCOS」において、新たな計測用途に向けた2つの水晶センサーを開発した。

 NAPiCOSは、ピコグラムやナノグラムといったわずかな質量変化を検出可能な解析装置である。水晶を利用したセンサー(水晶振動子)の共振周波数が、センサーの電極に付着した物質の質量変化に対して、敏感に反応する現象を利用したもの。

 従来から「食物抽出物に含まれるアレルゲン計測」や「低濃度(100pg/mL〜20ng/mL)インスリンの免疫計測」など、生化学やバイオ、医療、食品といった分野を対象にした、さまざまな計測作業に対応していた。今回新たに、低分子量の物質の計測と、抗体医薬品の濃度の定量計測を対象にしたセンサーを用意した。

図1 図1 NAPiCOSの水晶センサー NAPiCOSは、水晶センサー(水晶振動子)の電極に物質が付着したことによる周波数変化を検出することで、わずかな質量変化を検出する。電極表面には、特定の物質と結合する抗体などがあらかじめ固定化されている。

水晶センサーを利用した簡易計測を目指す

 日本電波工業の説明によれば、従来から、加工食品や医療薬品の研究分野で、分子量が100〜1000の低分子物質を計測したいという要望があったという。しかし、これまで低分子物質の検出は技術的に難しいという課題があった。

 NAPiCOSは、前述の通り、水晶振動子の電極に物質が付着したことによる周波数変化を検出する。電極表面には、特定の物質と結合する抗体などがあらかじめ固定化されている。結合物質の質量が大きいとその分、周波数の変化幅も大きくなり、検出しやすい。従って、検出したい物質の分子量が小さいと、周波数変化幅が非常に小さくなり、計測が困難になっていた。今回、「競合阻害法」と呼ぶ手法を新たに適用することで、この課題を解決したという。

図2 図2 NAPiCOSの測定原理の概略図 1つの水晶片に2つの電極を形成し、1つを参照電極、もう1つを反応電極にすることで、検出精度を高めている。図は、日本電波工業がCEATEC 2010に展示したパネル。

 また、最近、人の免疫反応を利用した抗体医薬品に注目が集まっているという。抗体医薬品の生産現場では、医薬品の濃度を定量化し生産・出荷する必要がある。この用途に向け、NAPiCOSを抗体医薬品の濃度の定量計測を対象にしたセンサーを開発した。

 「NAPiCOSは、高感度・高精度の計測を実現しつつ、利用者の技量によらない簡易計測を目指した解析装置だ。生化学やバイオ、医療、臨床、環境、食品といったさまざまな分野の検査・計測を対象に、今後も研究・開発を進めていく」(同社)。

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