Windows 8がx86の他にARMにも対応することが決まった。AMDはどう動くべきだろうか。x86互換のままIntelと対抗するべきか、ARMと協力してIntelとは違う道を進むべきか。ARMのCEOを務めるウォレン・イースト氏に聞いた。
プロセッサIPのライセンス供与を手掛けるARM Holdingsは、Advanced Micro Devices(AMD)に対して、ARMプロセッサのライセンス供与について、説得を試みている。AMDと世界最大手の半導体チップメーカーであるIntelは、長年にわたり競争を展開してきたライバル企業だ。
ソフトウェア業界の巨人であるMicrosoftとARMは、2011年6月に開催される「Fusion Developer Summit」において基調講演を行う予定だ。注目すべきは、Microsoftが最近、ARMプロセッサで動作するWindows 8に対してフルサポートを提供する予定だと発表したという点だ。
1つの可能性として考えられるのは、AMDがCPU/GPU統合プロセッサ「Fusion」のアーキテクチャを修正して、異種のコアを集積したヘテロジニアスなマルチコアプロセッサとして、x86コアとARMコア、グラフィックコアの3つを搭載するということだ。あるいは、複雑でコストもかかるx86アーキテクチャをベースにしたマルチコアを独自開発するという選択肢を放棄して、AMDがIntelに対抗する上でARMのコアを採用するという可能性も考えられる。
ARMのCEOを務めるウォレン・イースト(Warren East)氏は、同社の2011年第1四半期の決算発表会で、EE Times誌の取材に応じ、「AMDは、マイクロプロセッサ業界において大きな成功を収めている。一方ARMは、マイクロプロセッサIPのライセンス供与を手掛けている。ARMが過去10年間にわたり、AMDに対して、マイクロプロセッサIPのライセンス供与を提案し続けてきたのは当然のことだ。しかし今のところ、まだ成功には至っていない」と述べている。
またイースト氏は、「AMDは現在、これまでの戦略を見直しているようだ。このため当社にとっては、絶好のチャンスだといえる。AMDが将来的に、当社のマイクロプロセッサを採用できるよう、今後も説得を試みていく」と付け加えた。
イースト氏によれば、ARMはAMDに対して幅広いIPを提供可能であり、ARMのMaliグラフィックスプロセッサだけに注力するわけではないという。なお、AMDは2006年に、ATI Technologiesを買収したことによって、独自のグラフィックスコア技術を保有している。
イースト氏によれば「AMDは形式上、ARMのライセンス供与先だったことがある。なぜなら、ATI Technologiesはモバイル・アプリケーション部門の一部でARMのライセンス供与を受けていたからだ」という。その後、QualcommがAMDのモバイル・グラフィックス部門を6500万米ドルで買収している。
AMDは2008年に半導体製造部門を分離してファブレスメーカーとなり、半導体製造部門はファウンドリ企業であるGLOBALFOUNDRIESとなった。ARMは現在、GLOBALFOUNDRIESと緊密に協業している。
AMDは、機器メーカー各社と協業するファブレス企業であるため、ハードウェアとソフトウェアの一体化を実現して提供していく上で、コストと消費電力の削減に取り組む必要がある。
もしARMとAMDが、ライセンス供与に関する交渉を今すぐ開始するとなれば、恐らく次世代マルチコアプロセッサ「Cortex-A15」に注力していくだろう。しかしイースト氏は、Cortex-A8やCortex-A9をAMDにライセンス供与する可能性も残している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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