静電気は、電子部品/半導体部品の破壊や製品へのゴミの付着といった現象を引き起こす。産業技術総合研究所が開発した新技術を使えば、さまざまな製造工場で、静電気対策を効率的に進められる可能性がある。
産業技術総合研究所(産総研)は、静電気によるさまざまな悪影響に悩む生産現場で活躍する可能性を秘めた静電気測定の新技術を開発した(図1)。
音波と電磁波測定を使って、物体平面の静電気分布を検出し、可視化できる技術だ。静電気を測定するのにさまざまな制約がある生産現場でも柔軟に対応できる、非接触型計測装置の実用につながる研究成果である。
一般に、静電気は場所を選ばず至る所で不規則に発生するため、電子部品や半導体部品、精密機器などの製造工場では、電子部品/半導体部品の破壊やフィルムの吸着、製品へのゴミの付着といったトラブルの原因になっていたという。
特に、半導体製造工場では、半導体部品の静電気放電耐性の低下に伴って、静電気に起因した問題が深刻化している。もちろん、高度な静電気対策を施しているものの、最先端の半導体部品では、半導体回路の微細化や多層化が進んでいることや、高絶縁材料を採用していることなどから、静電気放電耐性が大幅に低下しているのが実情だ。そのため、「静電気対策を効率的に進めるために、製造工場のプロセス工程間などで発生する静電気を高速に測定する技術が求められていた」(産総研)という。
産総研が開発した新技術は、前述の通り、音波を使う(図2、図3)。静電気を帯びた物体(帯電体)に音波を印加して機械的に振動させると、電荷の位置が時間に伴って空間的に変化し、周囲に電磁界が誘起される。誘起される電磁界の強度と、物体(帯電体が振動した部分)の静電気量は比例するので、誘起された電磁界をアンテナで捕捉して強度を測定すれば、物体の静電気量を間接的に求められるというアイデアだ。収束させた音波を物体に当てて走査すれば、物体表面の静電気分布を可視化できる。
これまで、静電気の測定には表面電位計が広く使われてきたが、センサーを測定対象物に近づける必要があったため、測定範囲に制限があった。また、静電気分布を測定するには、センサーを1点ずつ走査する必要があったため、測定作業の高速化が難しかったという。
産総研では今後、空間的な測定の制約が多い生産現場で使える静電気センサーや、収束させた音波を高速で走査できる超指向性音響システムの開発を進める。
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