AMDがリストラに踏み切った。ただし、成長分野ではエンジニアやスタッフを雇用するという。業界関係者には、「モバイル分野での成長に向けて動くのではないか」とみる向きもある。
AMD(Advanced Micro Devices)は2011年11月、事業運営コストを2億米ドル削減する計画の一環として、同社の人員の10%を解雇することを明らかにした。
AMDは、「競争力をさらに高められるコスト体制を構築すべく、2012年に事業運営コストを約2億米ドル削減することを目指す」としている。このうち1億1800万米ドルは従業員の解雇で、残りの約8000万米ドルは、経営の合理化に向けたその他の戦略で削減する予定だという。AMDは、リストラ以外のコスト削減計画については詳細を明らかにせず、「財務部門やマーケティング部門を含め、あらゆる事業部門を変革する取り組みになる」と述べるにとどまった。
AMDの広報担当者は、「発注書の回覧/承認システムなどの細かいレベルから、各事業部門の意思決定プロセスといった大きなレベルまで、あらゆる業務レベルにおいて効率化を図っていく」と述べている。
一方、米国の市場調査会社であるIn-Statでアナリストを務めるJim McGregor氏は、「AMDのCEO(最高経営責任者)であるRory Read氏は、リストラを承認して経営の立て直しをすることを決意したようだが、“時すでに遅し”という感がある」との見解を示している。
McGregor氏は、AMDが2010年に年間を通じて人員を募集していたことに言及した上で、「AMDは今こそあらゆる事業部門の体制をじっくりと見直し、これまでの成功例と失敗例を見極める必要がある。役割が重複する重役を解雇するなど、経営体制を一新するにはよい時期だ」と述べた。
AMDの情報筋は、「リストラ策は、社員のスキルセットのバランスを取り戻すためには必要不可欠である」と主張する。
また、人員削減が全世界の事業拠点を対象に実施されることや、より大きな成長を見込める分野や新興市場では、エンジニアやスタッフを再雇用することを認めている。「新興市場に焦点を当てるということは、低賃金で従業員を雇うことが狙いではない。むしろ、新興市場に適した製品を開発するために、知識と経験が豊富な従業員を雇用したいと考えている」(AMD)。
Endpoint Technologies AssociatesのアナリストであるRoger Kay氏は、「Read氏は、初めてこれほど大規模なリストラ策に踏み切った。AMDは、今後も従業員を採用すると話しているが、おそらくモバイル機器の分野で雇用することになるだろう。ARMコアを搭載したプロセッサ『Tegra』を発表したNVIDIAや、モバイル向けのプロセッサ『Atom』に注力するIntelに比べ、AMDはモバイル分野ではいまだに大きな動きがないからだ」と語る。
また、The Linley Groupでアナリストを務めるKevin Krewell氏は、「リストラには痛みが伴うが、今回の計画はAMDにとって非常によい結果をもたらすだろう」と述べている。「個人的な見解だが、AMDは今後、ARMのパートナー企業となるか、ARMと競合するか、そのどちらかになるのではないか」(Krewell氏)。
現在のところ、AMDは、ARMに関連するコメントは出していない。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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