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共鳴型ワイヤレス給電巡る知財競争、“アメーバ的”に特許網が構築されつつあるワイヤレス給電技術

スマートフォンや電気自動車を充電する電源ケーブルを無くし、非接触で充電するワイヤレス給電技術。共鳴型と呼ぶ方式を積極的に開発するMassachusetts Institute of Technology(MIT)とWiTricityの特許戦略をまとめた調査リポートが発行された。

» 2012年01月31日 08時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 実際のシステムの製品化を前に、“アメーバ的”に特許網が拡大しつつある――。特許調査を手掛けるネオテクノロジーは、ワイヤレス給電技術の開発を進めるMassachusetts Institute of Technology(MIT)とWiTricityが出願した米国特許に関する調査リポートを発行した。

 WiTricityは、2007年に設立されたMIT発のベンチャー企業。比較的長い距離を高い効率で電力を送電できる可能性を秘めた「共鳴方式」の研究開発を積極的に進めている(関連記事)。この共鳴方式は、電気自動車に搭載された電池を非接触で充電するのに有望な技術とされており、業界の注目度も高い。特にWiTricityは、IHIやトヨタ自動車、三菱自動車と協業することを発表したこともあり、MIT/WiTricityの特許動向に関心が集まっていた。

 同リポートによれば、MITとWiTricityが共鳴型ワイヤレス給電技術の開発をスタートさせた初期段階に出願した特許がここ1年で次々と成立し、さらに新たな特許の出願が続いているという。具体的には、2005年の仮出願から始まったMIT/WiTricityの一連の米国公開特許は88件に上る。実際に権利化された特許件数は、2011年2月時点でMIT発が2件、WiTricity発が0件だったのに対し、2011年12月末時点ではMIT発が合計6件、WiTricity発が1件に増えた。

図1 図1 MITとWiTricityの特許出願マップのイメージ図 図中のピンク色の枠が権利化された特許。

 MITやWiTricityは、米国独特の特許制度である「仮出願制度*1)」と「継続出願制度*2」を効果的に利用して、ワイヤレス給電に関する特許網の構築を進めているという。継続出願制度を利用することで、特許を出願してから特許権が成立するまでの間(通常は3年程度)に、自社のみならず、他社の技術開発動向を察知して特許権の範囲を補正し、的確にカバーできる継続出願を提出できる。「1つの着想を基に技術を多様化し、米国特許独自の継続出願制度を利用して一連の出願ネットワークへと展開させている。 最近の企業が早期の研究開発段階で繰り広げる、先進的特許出願群のあり方を学ぶことができる」(ネオテクノロジー)という(図1)。

*1)仮出願制度とは、通常の出願に比べて費用が安く簡易な形式で出願できる制度。

*2)継続出願制度とは、最初の特許出願(親出願)から異なる独占権の範囲(クレーム範囲)を主張する子出願を提出できる制度。

 ネオテクノロジーは、「MIT/WiTricityのワイヤレス電力伝送」の米国特許に関する調査リポートの第1版を2010年7月、第2版を2011年2月に発行した。今回の第3版では、最新の約30件の米国特許(公開・登録)を追加した。各米国特許に発明ポイントの和文説明を掲載した他、特許間の関係を把握する時系列マップや俯瞰(ふかん)マップなどをまとめている(PDF形式のサンプルページ)。

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