半導体業界ではサプライチェーンに流れ込む偽造チップが大きな問題になっている。市場で発見される模倣半導体は、過去2年間で約3倍に増加したという。
市場調査会社である米国のIHS iSuppliによると、エレクトロニクスの国際的なサプライチェーンには、年間で1690億米ドル分もの偽造チップが流通しているという。
IHS iSuppliのデータによると、最も多く市場に出回っている偽造チップは、アナログIC、プロセッサ、メモリIC、PLD、トランジスタの5種類である。いずれも商用や軍用に広く用いられている。IHS iSuppliによれば、2011年に報告されたケースのうち、2/3強がこの5種類で占められており、その量は1690億米ドルの売り上げに相当するという。
IHS iSuppliのサプライチェーン/プロダクトマーケティング部門でディレクタを務めるRory King氏は、報道発表資料の中で、「偽造チップを大きく問題視しているのは軍需産業だが、発見された偽造品のうちのほとんどは、軍用にも商用にも幅広く用いられる民生機器向け半導体部品である」と述べた。
King氏によると、発見される偽造チップの4個に1個がアナログICだという。アナログICは、産業機器や車載機器から無線機器、民生機器に至るまで、あらゆる製品市場で用いられている。同氏は、「偽造チップがたった1つ搭載されているだけで、その製品は影響を受けてしまう。潜在的な問題は広範にわたるため、世界の半導体市場において何十億米ドルもの売上高がリスクにさらされていることになる」と述べた。
IHS iSuppliによると、2011年の世界アナログIC市場の売上高は477億米ドルに達した。そのうち、21%(98億米ドル)が民生機器分野、17%(80億米ドル)が車載機器分野、14%(67億米ドル)がPC分野、14%(65億米ドル)が産業機器分野、そして6%(29億米ドル)が無線通信分野からの売り上げだという。
King氏は、「偽造アナログICの欠陥は、電話がかけられないといった日常的な事象から、航空、医療、軍事、原子力、自動車といった分野での深刻な事故に至るまで、さまざまな問題を引き起こす可能性がある」と述べた。また、同氏は、「偽造品を組み込んだ製品を製造し直したり、修理したり、顧客からの返品に対応したりする必要が出てくるので、過剰なコストが発生することになる。エレクトロニクスの国際的なサプライチェーンにとって、偽造チップや不正部品の問題に立ち向かうことは、極めて重要な課題となっている」と指摘した。
IHS iSuppliは2012年2月、2011年に報告された偽造チップの量が記録的な規模であったと伝えた。模造チップが発見されるケースは、過去2年間で3倍に増えているという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.