Windowsスマートフォン「Lumia」は、Nokiaを窮地から救う一手にはならなかったようだ。Nokiaの不振による影響は、広範なサプライチェーンにも及んでいる。
Nokiaは2012年6月14日、携帯電話機事業の従業員の1/5に当たる1万人を削減すると発表した。さらに、幹部社員3名の退任も発表した。しかし、この計画に対する投資家の反応は冷ややかだった。同計画の発表直後から、同社の株を手放す動きが見られ、同社の株価は一日で15%以上も下がった。
NokiaのCEO(最高経営責任者)を務めるStephen Elop氏は、危機的状況の中で確固たるリーダーシップを発揮したつもりかもしれない。だが今回の発表は、同社の方向性を何一つ示せなかったばかりか、沈みかけた船を救うことができないということを露呈した結果となった。投資家は過去にも、経営危機に直面した企業がこのような再建計画を実施した事例を見てきており、この計画によってNokiaがどこへ向かうことになるのかをよく分かっている。Nokiaは2012年末には、利益と株価を大幅に下げることになると予想される。Microsoftのスマートフォン向けOS「Windows Phone」を搭載したNokiaの「Lumia」はそれなりの成功を収めているにもかかわらず、Nokiaの将来は危ぶまれている。
こうした厳しい評価の裏には、これまで衰退していった企業の歴史の数々がある。Nokiaが取ろうとしている行動は、かつて、市場で優位を確立した後、ゆっくりと失速していった企業が取った行動に酷似している。Nokiaは、技術的には歴史の闇に埋もれていくとは思えないが、人員削減や経営陣の交代の他、これまでElop氏が実行してきた戦略は、PalmやMotorola、Nortel Networks、Lucent Technologiesといった多くの大手携帯電話機メーカーが取った行動と似ているように思える。これらの企業は市場を読み誤り、転落していった。「Blackberry」の開発企業であるResearch In Motion(RIM)もNokiaと同様に低迷した状態にあり、再建計画を進めている。だが、現時点では期待どおりの成果を挙げられていない。
もしNokiaの計画に対する投資家の評価が厳しいと思うなら、同社の売上高の推移を見てみるとよいだろう。さらに、他の重要な要因についても、詳しく分析することを勧めたい。重要な要因とは、同社が現在の状況に陥った理由や、AppleやSamsung Electronics、HTC(High Tech Computer)といったライバル企業の現状、携帯電話機市場で起こっている変化、ライバル企業と再び競争するためにNokiaがすべきことなどである。また、Nokiaが人員を削減することで同社を再建しようとしていることが(生き残るために必要な行動ではあるが)、従業員の士気をくじき、同社のコントラクタやサプライヤ、同社の今後の成長を支えるサードパーティの支援企業などに対し、中途半端な印象を与えていることは否めない。
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