通信用半導体市場におけるNokiaのサプライヤは、過去にMotorolaなどのメーカーが経営不振に陥った影響を受けて、自社の存続が危機にさらされた経験を思い出さずにはいられないだろう。これらのサプライヤは、危機的な状況から抜け出すためには、早めに競合メーカー側につくべきだということを経験的に理解している。Nokiaのエコシステムを構成しているメーカーは、同社が不安定になるにつれ、焦りを感じてエコシステムから抜け出そうと必死になる。その結果、Nokiaにとって必要不可欠なエンジニアらが競合メーカーへの転職を急いだり、Nokiaのライバル企業により多くのリソースを投入するアプリケーション開発メーカーが増えてきたりするだろう。
Nokia不振の影響は既に、広範なサプライチェーンのメーカー各社にも及び始めている。例えば、DSPのIP(Intellectual Property)コアベンダーであるCEVAは最近、2012年の売上高および収益に関する予測を大幅に下方修正しており、その理由を、「主要な顧客であるNokiaの売上高が予想以上に落ち込む見込みであるため」としている。多くのサプライヤは現在、不安定な巨大企業の下で押しつぶされる可能性があると考えているのだ。
Nokiaは、過去の栄光が急速に消えつつあるという事実を直視する必要がある。人員を削減したり、経営陣を入れ替えたりすることは、Nokiaの損益が収益を上回っていることを認めることになるだけだ。
同社は、報道向け発表資料の中で、「2012年第2四半期におけるデバイス&サービス(Devices & Services)部門の非IFRS(国際会計基準)ベースの営業利益率は、2012年第1四半期の−3.0%を下回る見込みだ。これは、ほぼ予測どおりだといえる」と述べている。
Nokiaは現在、現金の確保を最優先課題としている。今回の人員削減によって損益分岐点を引き下げることにより、貸借対照表上の課題を解決することはできる。しかし、Nokiaが不振に陥った真の原因に対処することはできない。かつて、Symbian端末の製造を突然打ち切ってWindows端末に切り替えるという、決して賢明とはいえない選択をしたことも重なり、もはやNokiaの力ではAppleやSamsung Electronicsに追いつけないことを明確に示す結果となった。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.