Ericssonは、触れるだけで車やホテルの部屋の鍵を掛けたり、スマートフォンのデータを移動したりできる、人体を利用した通信技術「HBC(Human Body Communication)」の開発を進めている。
人間の体そのものが通信ネットワークの一部になる――。Ericssonは、「触れる」ことによってモバイル端末のデータを高速に移動させることができる、人体を使った独自の通信技術「Connected Me」の開発を進めている。
「HBC(Human Body Communication)」と呼ばれる無線通信技術で、「モノに触れるという自然な動作と通信技術の組み合わせというクリエイティブな思考には、果てしない可能性がある」(同社)という。「商品化時期は未定だが、数年以内に実用化される見込み」(同社)である。
一般に、人体周辺の無線通信は大きく2つに大別できる。1つは人体“近傍”を通信領域に設定したもの。もう1つは人体“そのもの”を伝搬路にする通信方式である。前者は、携帯電話や無線LANといった一般的な無線通信と同様に電波を使ってデータをやりとりするのに対して、後者は人体そのものに電磁界を形成させ、データを伝える媒体にするという点が異なる(関連記事:第3の電磁界で消費電力削減へ、豊通エレが新通信技術をデモ)。
EricssonのConnected Meは後者の方式に相当する。人間の行動がそのままデータのやりとりにつながるという点が最大の特徴だろう。同社は「低速」、「中速」、「高速」という伝送スピードに応じて以下のようなアプリケーションを想定している。
低速
中速
高速
ここまで読んで、「あれ!? 何を今さら……」と感じた読者も多いかもしれない。日本国内では、少なくとも2000年ころからHBC(Human Body Communication)を使った試作品が発表されていた(その1、その2、その3)。最近の事例では、日立製作所やNTTコミュニケーションズが、Human Body Communicationを使った入退室管理システムを共同開発したと発表している(ニュースリリース)。
ただ現状では、「技術としては面白いが、市場になかなか広がっていかない」、「Human Body Communicationならではのアプリケーションが発掘できていない」と評価されているのではないだろうか。これに対してEricssonは、ニュースリリースの中で以下のように説明している。
「Human Body Communication技術の実用化の追い風となる少なくとも2つの重要な『イネーブラー』がある。その1つは、世界中で急速に拡大しつつあるモバイルブロードバンド。もう1つは移動通信事業という分野全体の劇的な変化だ。現在開発中のスマートフォンの多くは、センサー入力に対応したアプリをベースにしている。Human Body Communicationはその意味でも自然な追加機能とみなされるだろう」。
この他、これまでは比較的低速の試作例が多かったが、Ericssonの試作例では、10Mビット/秒と高速のデータ伝送を実現できていることも特徴である。「当社のソリューションは10Mビット/秒で作動しているが、20〜40Mビット/秒が達成可能だ」(Ericsson)という。
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