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囲いから解き放たれるロボット、人間の生産性を高める“協働”へロボット技術(1/4 ページ)

人間に傷害を負わせないように防護用の柵に囲われていたロボットが、我々のすぐ隣で仕事をするようになる――。生産ラインで人間の作業員と並んで組み立てに従事したり、高齢者や障害者が独力で自宅での生活を送れるように支援したりする、“協働ロボット”の開発が進んでいる。ロボット業界の取り組みを追った。

» 2012年09月14日 16時50分 公開
[R. Colin Johnson,EE Times]

 現代の製造業はロボットの力なくしては立ち行かない。それくらいロボットは製造業で広く使われている。組み立てラインの自動化を担い、メーカーが他社との差別化を図れるように、柔軟な製造調整やオンタイム出荷などに貢献する。

 ただし従来は、そうした産業ロボットが人間の作業者と並んで仕事をすることはなかった。周囲の作業者に傷害を与えてしまう危険性があるからだ。そのためロボットを人間から隔離した場所に配置し、防護用の柵で囲う必要があった。

 組み立てラインのロボットが進化し、近くに人間の作業員がいることを検知して、必要に応じてその作業員に従うような能力を備えれば、人間に傷害を負わせるリスクを排除できる上に、作業者と並んで仕事をこなして生産性を今以上に高めることが可能になるだろう。すなわち“協働ロボット”の新たな時代が幕を開けることになる。

産業の次はヘルスケアを自動化へ

 「Open Source Robotics Foundation(OSRF)」でCEOを務めるBrian Gerkey氏は、「協働ロボットは、自動車や航空宇宙などの分野の製造業に変革をもたらすはずだ」と指摘する。OSRFは、ロボティクス向けオープンソースソフトウェアの推進に取り組む2012年に創設された非営利団体(NPO)で、米国のシリコンバレーに拠点を置く。

 さらにGerkey氏は、協働ロボットについて、「ヘルスケア分野のようなメインストリームの市場にも自動化をもたらすだろう」と予測しており、「産業オートメーションの分野に普及した後は、家庭内で人間を補助する用途が新たな市場になる。特に、一人住まいの高齢者が生活できるように補助する応用が有望だ」との見方を示す。

Willowの個人用ロボットの第2世代機「PR2」 Willow Garage とGeorgia Tech のHealthcare Robotics Labが共同で手掛けるプロジェクト「Robots for Humanity」では、Willowの個人用ロボットの第2世代機「PR2」を使って、高齢者や障害者の自宅での生活を補助する取り組みを進めている。 (クリックで画像を拡大)

 OSRFはオープンソースのロボット用OS「ROS(Robot Operating System)」を公開しており、ロボティクス分野の研究者らに既に10万回以上もダウンロードされているという。このROSはロボットメーカーにも使用され始めた。例えば、米国のカリフォルニアに拠点を置くWillow GarageとGeorgia Institute of Technology(Georgia Tech)のHealthcare Robotics Labが共同で取り組むプロジェクト「Robots for Humanity」では、高齢者や障害者を補助する用途に向けてWillow Garageが開発した個人用ロボットの第2世代機にROSが使われている。

 Willow Garageの研究者であるMatei Ciocarlie氏は、「協働ロボットは、食事やかゆいところをかくなど、高齢者や障害者のあらゆる動作を補助し、そうした人々が独力で自宅での生活を送れるように支援できる」と語る。

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