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囲いから解き放たれるロボット、人間の生産性を高める“協働”へロボット技術(4/4 ページ)

» 2012年09月14日 16時50分 公開
[R. Colin Johnson,EE Times]
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市販ゲーム機に使われた技術がロボットの立体視を実現

 協働ロボットの革命を先導する企業の1社がイスラエルのテルアビブにある。Microsoftのゲーム機「Xbox 360」用のモーションコントローラ「Kinect」に採用されている赤外線方式の3Dビーコン/カメラ用チップを開発したPrimeSenseだ。

 同社のチップの機能はこうだ。まず、赤外線ビーコンによって空間にドットでグリッドパターンを描くように赤外線を照射する。ここで各ドットにおける赤外線の反射輝度は、光源からの距離に比例している。その反射を赤外線カメラで捉えて輝度の計測結果を処理することで、深度マップを作成する仕組みだ。可視光帯域のカメラで別に撮影した空間の画像にこの深度マップを重ねれば、ロボットは距離を正確に判断できることになる。

 同社でマーケティング担当バイスプレジデントを務めるTal Dagan氏は、「MicrosoftがXbox用にKinectを発表して以来、当社の3D技術を利用したいと考えた数多くのロボットメーカーとビジネスが進んでいる」と話す。

 ロボットはPrimeSenseの3Dビジョンセンサーによって空間中の物体との距離を判別できるようになり、移動制御(ナビゲーション)のアルゴリズムを大幅に簡略化することが可能だ。例えば、Georgia Techの教授であるHenrik Christensen氏は、航空機メーカーのBoeing向けに、組み立てラインで人間の作業者を補助する協働ロボットを開発中である。PrimeSenseのチップは、この協働ロボットが作業者から指示を受けて部品を取りにいく際に、その部品のところまでロボットをナビゲートするためのアルゴリズムを簡略化するために使われている。

 Christensen氏は、「PrimeSenseのチップは、“視覚を備えたシステム”という新たな時代を開いた。ロボットメーカーは、ロボットにリアルタイムに指示を与えるためのアルゴリズムを完成させる取り組みを始めている」と語る。

iRobotとInTouch Healthが共同開発した新型医療ロボット「RP-VITA」 iRobotとInTouch Healthが共同開発した新型医療ロボット「RP-VITA」は、患者が遠隔にいる医師の診療を受けられるテレプレゼンスシステムだ。このロボットには、PrimeSenseの3Dビジョンセンサーが4個使われている。出典:iRobot

 PrimeSenseのチップを使った3Dビジョンセンサーは、ロボットに人間と同じような感覚を用いて周囲の状況を認識させられる技術として、ロボット業界で広く使われるようになっている。

 PrimeSenseのチップを複数個組み合わせて活用しているロボットメーカーもある。その1社が、お掃除ロボット「ルンバ(Roomba)」を生み出した企業として知られる米国のiRobotだ。同社は自律型移動ロボットの開発プラットフォームである「AVA」のベース部とヘッド部それぞれにPrimeSenseの3Dビジョンセンサーを搭載している。

 iRobotの最新の商用ロボット「RP-VITA(Remote Presence, Virtual Independent Telemedicine Assistant)」は、このAVAをベースにして米国のInTouch Healthと共同開発した医療用ロボットである。PrimeSenseの3Dビジョンセンサーを4個使用しており、内訳は3個がそれぞれナビゲーション用と障害物検知用、障害物回避用で、4個目は患者認識用としてヘッド部に取り付けられている。

 PrimeSenseは、ロボットの開発者を支援する目的で、オープンソースのファウンデーション「Open NI」を立ち上げた。自社チップのユーザーに向けて、ナチュラルインタフェース用アルゴリズムをライブラリ化して提供する。このライブラリは今、1カ月に7万5000回のペースでダウンロードされているという。



【翻訳/編集:EE Times Japan】

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