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囲いから解き放たれるロボット、人間の生産性を高める“協働”へロボット技術(2/4 ページ)

» 2012年09月14日 16時50分 公開
[R. Colin Johnson,EE Times]

産業ロボット誕生から半世紀、時代が動く

 昨年(2011年)は、産業用ロボット誕生50周年だった。50年前の1961年に、米国のGeneral Motors(GM)が世界で初めて産業ロボットを導入したのである。International Federation of Robotics(IFR、国際ロボット連盟)によれば、今や世界中で100万台を超すロボットが生産ラインに組み込まれているという。この数字は、“協働ロボット”という新領域のロボットの登場によって、今後数年でさらに大きく膨らむとみられている。

 The Robot Report誌の編集者で発行人を兼務するFrank Tobe氏は、「事業規模の小さな企業が巨大な競合相手に対抗するには、生産性をより一層高めることが必要である。それには、協働ロボットの利用が不可欠だ」と指摘する。

 Georgia Techで教授を務めるHenrik Christensen氏は、次のように話す。「協働ロボットは、人間の近くで安全に働くことができ、旧来の安全性対策を不要にするとともに、作業者の生産性も増大させるという、以前にはなかったことを可能にするものだ。例えば、自動車工場の組み立てラインで人間の作業者と並んで働くとしよう。ロボットは重量のある部品を持ち上げて、ボルトやナット、その他の固定具の取り付けに長けた人間のために、その重い部品を人間が作業しやすい位置に保持するといった役割を担うことができる」。

 GMはNASA(米航空宇宙局)と共同で宇宙用のヘルパーロボットを開発し、国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)で人間の宇宙飛行士にとっては退屈で危険な作業を代わりに担当させ、その有用性を実証した。これに応えて、米国のオバマ政権はNational Robotics Initiative(国家ロボットイニシアチブ)を立ち上げ、協働ロボットの利用拡大を推進することになった。その推進策によって、ロボット技術は新たな課題に向けて急速な発展をみせつつある。

 The Robot Report誌のTobe氏は、「National Robotics Initiativeが大きな刺激になることは間違いない。ただ、たとえこの刺激策がなかったとしても、今や協働ロボットの時代なのだ」と指摘する。

 米国のこのロボット推進策では、産業オートメーション用の協働ロボットの他、高齢者の補助を担う共生型ロボット、さらに軍事用途の防衛ロボットの開発を目標としており、2012年に7000万米ドルを拠出する計画だ。米国政府でこの推進策を手掛ける担当者は、別に進める5億米ドル規模のプログラム「Advanced Manufacturing Partnership(先端製造パートナーシップ)」と連携し、労働生産性を向上させることで“米国に製造業を取り戻す”べく、協働ロボットの利用を促進している。

 米軍も協働ロボットのイノベーションに多額の資金を投じる。米陸軍は今年(2012年)の初めに、「Engineering Squad Robot」の計画を策定した。この計画は、「爆発物を遠隔から検知して無害化処理したり、市街地における偵察行動などの戦闘作戦や軍事警察作戦を展開したりする際に、熟練した作業員として使用できるロボット」を開発するというものだ。

 米国防総省(Department of Defense:DoD)も協働ロボットのイノベーションの推進を図る。国防高等研究事業局(Defense Advanced Research Projects Agency:DARPA)において、「Robot Challenge」と呼ぶプログラムを今年遅くに立ち上げる予定だ。このプログラムでは、ロボット開発者らが200万米ドルの賞金を目指して災害復旧用途に向けたロボットの開発を競うコンテストを開催する。目標は、災害地に入り込んで人命救助のために半自動で仕事をこなす協働ロボットだ。コンテストに参加する協働ロボットは、過酷な環境における意思決定と認識、移動の各能力に加えて、器用さ、力強さ、耐久性、そして車両や機器の操作能力で評価を受ける。

DARPAが主催する「Robot Challenge」のコンテスト DARPAが主催する「Robot Challenge」のコンテストでは、自然災害と人工災害に投入可能な、人間の指示を受けて自律的に動くロボットの開発を競う。優勝者には200万米ドルの賞金が贈られる。出典:DARPA (クリックで画像を拡大)

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