IntelのCEOであるPaul Otellini氏が、2013年5月に退任することを発表した。後継者が誰になるのか。創業以来、社内の幹部が昇格してCEOに就任してきたIntelだが、今回は社外からCEOを引き抜く可能性もあるという。
Intelは創業から45年間にわたり、社内で育成した幹部をCEO(最高経営責任者)に任命するというやり方を通してきたが、こうした後継者選びに終止符が打たれることになるかもしれない。同社の現CEOであるPaul Otellini氏は2012年11月19日、2013年5月に退任すると発表した。後継者は社内外から選考するという。Intelに、社外から招き入れた初のCEOが誕生する可能性も高い。
Intelの次期CEOに関しては、予想外の人物になるのではないかなど、さまざまな憶測が流れている。
Intelの歴史の中で今必要とされているのは、1993年から2003年までIBMのCEOを務めたLouis Gerstner氏のような人物だろう。米国のタバコメーカーであるR.J. ReynoldsのCEOだったGerstner氏は、IBMにCEOとして引き抜かれ、経営難に陥ったIBMを現在のようなコンピュータ大手に再生した。つまり、同社の経営モデルを改革し、変化の激しい半導体業界の展望を見渡せるようなCEOを、社外から引き抜く必要があるのだ。
Gerstner氏がIBMを再生させたようにIntelを改革できるのが誰なのかは、まったく予想がつかない。ただし、Intelには変化が必要だという認識は多くの人が持っている。
Intelの中核であるPC事業は低迷し、“Wintel(Windows+Intel)”の複占にもかげりが見え始めている。Microsoftは、ARM対応版のOSである「Windows 8」や「Windows Phone」を投入した。一方、Intelは、LinuxやAndroidベースのサーバやスマートフォンに対応するプロセッサを開発している。
だが、重要なのは、「ムーアの法則」を継続していくという旧来からのIntelのやり方が、次の時代には合わないのではないかと思われることだ。システムには、処理能力の大きさだけではなく、エネルギー効率がよりいっそう求められている。半導体の微細化は歩みを緩めつつあり、プロセス技術に対する投資に見合うだけの価値を提供できなくなってきている。
しかし、「Intelは依然として、同社の最先端のプロセス技術を、今後の成功のカギと考えている」と、市場調査会社である米国のForward Conceptsで主席アナリストを務めるWill Strauss氏は言う。同氏は、「Otellini氏の後継者にどのような人物が就任するのかには、気になるところだ。Gordon Moore氏のような物理学者、QualcommのCEOであるPaul Jacobs氏のようなエンジニア、Otellini氏のような経営者など、CEOのタイプはさまざまだ。私は、“ビジネス経験豊かなエンジニア”というプロフィールを持つ人物に一票を投じたい」と述べている。
Otellini氏は、8年間のCEO在任中に多くの功績を果たしたことで称賛を得ている。同氏にとって最大の敗因は、PCに代わる情報端末として台頭するモバイル市場において優位を築けなかったことだ。Intelの組み込み機器向けプロセッサ「Atom」は、スマートフォンやタブレット端末でいくつかのデザインウィンを獲得している。しかし、その数はARMベースのチップに比較すると、比べ物にならないほど少ない。
IntelのUltrabookは、短期的にはタブレット端末の急成長に対抗できたものの、それも長くは続かなかった。アナリストは、「Ultrabookのシェアは、『2012年第4四半期において、クライアント端末の出荷台数のうち40%を確保したい』というIntelの目標の半分にも到達しない」と予想している。
Otellini氏は現在62歳だが、同社の定年である65歳まで現職を続けるとみられていた。「2013年5月に退任する」という発表は予想よりも早かったため、同社の将来に対する懸念が持ち上がっている。
こうした背景を考慮すると、Intelの次なる展開は、予想外の新CEOを迎え、まったく新しい事業計画を描くことになるのではないかとも考えられる。Intelは、モバイル事業の戦略を見直すとともに、ファウンダリへの発注などを含めた製造戦略についても考え直す必要があるだろう。
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