マーケティングの観点を持って、あらためて技術を見ると、設計思想、アーキテクチャ、設計手法、所用機能、基盤技術がガラッと変わることがあります。結果的に開発期間、開発費用に多大な影響を与えることが少なくありません。今回は、「技術マーケティング」と「コンセプトメイキング」について、お話します。
開発部の田中課長は、佐々木さんに「開発の前工程部門である企画やマーケティング」について学んでもらいたいと考えていました(第14回)。マーケティング部の松田課長と、「顧客・市場・競合について分かるエンジニアが増えるといいのにね」と話しながら、「若手エンジニアが製品コンセプト会議に参画すること」を考えています。
田中課長、ちょっとこんな絵を作ったのですが見てもらえますか(図1参照)?
松田さんお得意のチャートですね!
左側は「一般的なマーケティング論」です。4P(Product, Price, Place, Promotion)の活動を通じて、“ターゲット顧客”へ価値を提供します。
うんうん、これは僕でも分かる。
一方、右側は技術開発を中心に描いたものです。当社が保有する“技術のプラットフォームやコア技術”を生かし、“技術開発体制”を組み、“技術開発プロセス”を進化させながら、“重点技術開発領域”に開発資源を投入するイメージです。「技術マーケティング」と呼んでいます。
なるほどね。マーケティングと技術開発を切り離すのではなく、お互いに連動していくという考え方だね。
本コラムは「若手エンジニアの育成」がテーマなので、マーケティング理論や経営戦略論に深入りはしませんが、少しだけ述べたいと思います。
一般に、自社にとって有望な顧客は他社にとっても有望な顧客になります。自社の顧客を守る、あるいは自社に有利に顧客を囲い込むためには、自社がターゲットとしている有望顧客にアプローチしている競合会社を明確にし、それら競合会社の戦略や強み・弱みを分析して、差別化要因を見いだすといった方法があります。
競合会社を3つに分類をすると、以下のようになります。
競合会社の調査・分析を行い、市場ニーズや顧客の声をキャッチすることで、マーケティング戦略が出来上がります。しかし、マーケティング戦略が優れていたとしても、製品として作り上げることができる“技術力”や”開発力“を含めた「技術開発戦略」を持ち合わせていなければ、製品化において競合他社に大きく差を付けられ、市場からは取り残されていくこととなります。「マーケティングも技術も必要」なのです。
第12回の図2において「コンセプトメイキング」の話をしましたが、“開発の仕事”を少し広げ、“企画・マーケの仕事”の領域に入り込むと、製品構想がより明確に開発エンジニアにも見えてきます。
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