米大学が、原子1個分の厚さを持つシート状のゲルマニウム結晶を生成することに成功した。この材料は、電子移動度がシリコンに比べて10倍になるという。グラフェンなどに続き、シリコンに代わる新しい材料がまた1つ登場したようだ。
米国オハイオ州のOhio State Universityの研究グループは、厚みがわずか原子1個分という、シート状のGe(ゲルマニウム)を生成する技術を開発したと発表した。Si(シリコン)に比べて電子移動度が10倍高く、「奇跡の素材」とも呼ばれるグラフェンに似た特性を持ちながら製造も簡単だという。
同大学の教授であるJoshua Goldberger氏は、「ゲルマニウムを用いて、グラフェンによく似た材料を生成することに成功した。この新材料は、グラフェンと同じく、水素終端された単分子層であるが、グラフェンよりもはるかに簡単に生成できる。今回、製造プロセスにおいて、材料を間接遷移から直接遷移へと変換したことで、光学用途での利用も可能になった」と述べている。
Goldberger氏は、「ゲルマニウム化カルシウム(CaGe2)のデインターカレーション(イオンが脱離する反応)を用いて、水素終端したGe(GeH)の結晶格子を製造することに成功した」と述べる。同氏によれば、構造が水素で終端したグラフェン(CH)によく似ていることから、「Graphene(グラフェン)」にちなんで、今回のゲルマニウム新材料を「Germanane」と名付けたという。
Germananeは、既存の半導体製造装置を使用して、グラフェンよりもはるかに簡単に生成できる見込みだ。Goldberger氏によると、「Germananeは、次世代のオプトエレクトロニクス機器や高性能センサーなどの製造において、極めて有望な材料だ」という。試算によれば、Germananeの電子移動度は、バルク状のGeよりも5倍高く、Siより10倍高い。さらに、バンドギャップは1.53eVで、GaAs(ガリウムヒ素)よりも高い。
半導体単分子層の電子特性の方がバルク材料の電子特性よりもはるかに優れていることは、グラフェンの研究者たちによって既に実証されている。このため、さまざまな材料で結晶格子を生成する研究がさかんに行われてきた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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