残念ながら、そうならないのです。
先ほど私は、「季節、時間、その他を全部無視して平均値を出した」と述べましたが、ここに落とし穴があります。
そもそも、この「10000」という定数の考え方がダメなのです。
電力に「平均値」なんぞ意味がない ―― とまでは言いませんが、もっと深刻な問題「ブラックアウト(大停電)」を回避するためには、常に、その瞬間、瞬間の消費電力を上回る電力を、発電所で作り出さなければならないのです(前半をご一読ください)。
誰かから聞いた話なのですが、電力会社には、電力需要を予測する「電力予報士」のような業務に携わる方がいらっしゃるそうです。
彼らの任務は過酷です。なぜなら、
という、背反した2つの命題を抱えた上で、リアルタイムの計算をし続けなければならないからです。
彼らは、コンピュータを駆使して、上記の難しい綱渡りの計算を行っています。
気温、湿度、平日・休日、季節、行楽、人々の興味やイベント(テレビドラマからワールドカップまで)から、オフィスのクーラーの稼働状態、日本中の工場の生産工程、鉄道の輸送力に至るまで、常に考慮して、必要だと予想される電力を計算し、各発電所に発電量の指示を出し続けなければならないそうです。
天気予報士よりも、さらに高いプレッシャーにさらされる過酷な業務です(私なら、絶対に逃げます)。
まあ、それでも、発電所が作る電力に余裕があれば、「ゴミとして捨てられる」という損害はありますが、「若干多めの電力を作る」ということにしておけば、ブラックアウト(大停電)だけは避けることができます。
問題は、彼らの能力ではもはやどうしようもないこと ―― 例えば、発電所の電力生産能力を超えるような電力需要が発生した時です。
それが、「灼熱の太陽が照りつける、真夏の午後2時」です。
上記のグラフを見つけた時、「なんだ。それでも最大瞬間電力は『6000』か。『16000』にはほど遠い。驚かせやがって」と、ホッとしました。ですが、はたと気が付きました。
これは、「東京電力管区だけ」の推定値だったのです。全国のピーク値は、もっと大きくなるはずです。
ここからの試算は、各電力管区の使用電力量の単純な比から求めることにしました。
計算結果は以下の通りです。
―― 日本の総電力生産能力16000に対して、3000ほど足りない ―― となります。
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