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日本の電力は足りているのか?――“メイドの数”に換算して、検証してみる(後編)世界を「数字」で回してみよう(3)(2/4 ページ)

» 2014年07月17日 08時00分 公開
[江端智一EE Times Japan]

真夏の午後2時

 残念ながら、そうならないのです。

 先ほど私は、「季節、時間、その他を全部無視して平均値を出した」と述べましたが、ここに落とし穴があります。

 そもそも、この「10000」という定数の考え方がダメなのです。

 電力に「平均値」なんぞ意味がない ―― とまでは言いませんが、もっと深刻な問題「ブラックアウト(大停電)」を回避するためには、常に、その瞬間、瞬間の消費電力を上回る電力を、発電所で作り出さなければならないのです(前半をご一読ください)。

 誰かから聞いた話なのですが、電力会社には、電力需要を予測する「電力予報士」のような業務に携わる方がいらっしゃるそうです。

 彼らの任務は過酷です。なぜなら、

  • 必要ない時に、余分に電力を作っても、ゴミとして捨てられるだけ→大損害
  • 必要な時に、電力が足りなければ、「ブラックアウト(大停電)」になる→大損害というレベルを超える損害

という、背反した2つの命題を抱えた上で、リアルタイムの計算をし続けなければならないからです。

 彼らは、コンピュータを駆使して、上記の難しい綱渡りの計算を行っています。

 気温、湿度、平日・休日、季節、行楽、人々の興味やイベント(テレビドラマからワールドカップまで)から、オフィスのクーラーの稼働状態、日本中の工場の生産工程、鉄道の輸送力に至るまで、常に考慮して、必要だと予想される電力を計算し、各発電所に発電量の指示を出し続けなければならないそうです。

 天気予報士よりも、さらに高いプレッシャーにさらされる過酷な業務です(私なら、絶対に逃げます)。

 まあ、それでも、発電所が作る電力に余裕があれば、「ゴミとして捨てられる」という損害はありますが、「若干多めの電力を作る」ということにしておけば、ブラックアウト(大停電)だけは避けることができます。

 問題は、彼らの能力ではもはやどうしようもないこと ―― 例えば、発電所の電力生産能力を超えるような電力需要が発生した時です。

 それが、「灼熱の太陽が照りつける、真夏の午後2時」です。

夏期最大電力使用日の需要構造推計(東京電力管内) 平成23年5月 資源エネルギー庁の資料を元に作成

 上記のグラフを見つけた時、「なんだ。それでも最大瞬間電力は『6000』か。『16000』にはほど遠い。驚かせやがって」と、ホッとしました。ですが、はたと気が付きました。

 これは、「東京電力管区だけ」の推定値だったのです。全国のピーク値は、もっと大きくなるはずです。

 ここからの試算は、各電力管区の使用電力量の単純な比から求めることにしました。

 計算結果は以下の通りです。

 ―― 日本の総電力生産能力16000に対して、3000ほど足りない ―― となります。

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