Threadは、クラウドからエンドデバイスへとIPをネイティブサポートするため、IPv6や6LoWPANなどの実証済みの技術でも実装が可能だ。Threadの低消費電力の無線メッシュネットワークプロトコルは、IEEE 802.15.4規格をサポートするという。
米国の市場調査会社であるNextMarket Insightsの創設者であり、チーフアナリストを務めるMichael Wolf氏は、「白紙の状態からスタートする場合は、Threadの方がZigBeeやZ-Waveよりもメリットが大きい。ZigBeeは、多くの業界関係者から複雑とみられていて、一方でZ-Waveは、実質的に1社の企業によって管理されている状況にある」と述べている。
しかし同氏は、「Threadは実際のところ、対応製品がまだ1つも発表されておらず、大きな後れを取っている」と指摘する。
米国の市場調査会社であるIHSのコネクティビティ部門で主席アナリストを務めるLee Ratliff氏は、Wolf氏の見解に同意する。「Thread対応製品は、まだリリースされていない。Threadのロゴを付けた製品が出回るのは、早くても2015年の半ばか、クリスマスシーズンごろになるだろう」と述べる。
Wolf氏は、「Freescaleのベータ開発プログラムは、ZigBeeに失望している企業に対して、新たな道を提供できる可能性がある。ZigBeeとThreadはいずれも、IEEE 802.15.4をサポートするためだ」と指摘する。またFreescaleは、ダイバーシティアンテナを備えたデュアルPAN対応のシングル無線チップを提供するという。このため顧客企業は、ネットワークの切り替えが可能になるだろう。
Wolf氏とRatliff氏はいずれも、Thread構築のためのプラットフォームとツールが開発メーカーに提供されることで、Thread対応製品の市場投入の後れが解決すると確信しているという。
ここでWolf氏は、Appleの「HomeKit」を例として取り上げた。同氏は、「『iGrill』を開発したiDevicesは2014年11月、AppleのHomeKitプログラム向けに1000万米ドルの資金を投じたことを発表している。こうしたiDevicesの動きから、同社がHomeKitを実質的にサポートしていることを示すだけでなく、HomeKitで何ができるのかを明確に提示しようとしたことが分かる」と指摘する。Freescaleの新しいThreadプログラムでも、同じようなことが起こる可能性があるといえる。
しかし、Threadが他の無線ネットワーク規格にとって競合となる前に、どうしても拭い去れない疑問を解決する必要がある。「第3の無線は本当に必要なのだろうか」という点だ。
Wolf氏は、「現在、ホームオートメーション機器全体の99%が、IEEE 802.15.4に対応していない。これは非常に大きな問題だといえる。その一方で、ホームオートメーション機器の大半は、無線LANとBluetoothをサポート済みだ。これらの機器は広く普及し、安定性を確立している。その上、必ずしも全てのホームオートメーション機器にメッシュネットワークが必要だとは限らない」と指摘する。
しかし、特定の用途においてメッシュネットワークが必要になったとしても、Bluetoothの標準化団体である「Bluetooth SIG」が現在、Bluetoothメッシュネットワークの開発に取り組んでいるところだ。今のところ、Bluetooth SIGが「CSRmesh」技術の採用を決断するかどうかは分からない。それでも、Qualcommが最近CSRを買収したことで、CSRmeshの重要性が幾分増していくとの見方が大半だ。
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