こんにちは、江端智一です。
前回は、環境問題の中でも、特に地球温暖化問題とは、「極めて面倒くさい問題」であるというお話をしました。
具体的には、
ということです。
今回は、地球温暖化問題に対して、唯一、私たち人類が挑める可能性のある「CO2による地球温暖化」 ―― は、次回に回して ―― 今回は「CO2そのもの」についてお話したいと思います。
CO2の話を始める前に、少しだけ温室効果ガスについて説明致します。
温室効果ガスとは、CO2の他、フロン、メタンなど、合計6種類のガスのことです。
太陽からのエネルギーが、地球の地表にぶつかって、再び宇宙空間に戻っていく時に、その一部(赤外線の一部)を吸収して、大気中に一時的に蓄積させることのできるガスです。
イメージとしては、宇宙空間を経由して、光の速度で地表に直撃した太陽エネルギーを、すぐには宇宙に返さずに、大気圏内でチンタラのんびりと時間をかけて宇宙空間に戻すガスだと思ってください。
太陽からもらったエネルギーは、最終的には耳を揃えてちゃんと宇宙空間に返却するのですが(返却しなければ、地球の温度は無限に上がり続けてしまう)、このエネルギーの「チンタラ返却」によって、結果的に大気の温度が上昇することになります。
これが温室効果です。
温室効果は悪者ではありません。むしろ地球上の全ての生命体の救世主です。
今回、簡易温室効果モデル*1)を使って、「温室効果が全くない地球」の地表温度を電卓で叩いてみたところ、「−16.3度」になりました*2)。かなり寒いです。このような低温環境では、現在の人類は存在できないし、そもそも人類は生まれなかったでしょう。
*1)大気化学入門(p.128-) D.J.ジェイコブ(著) 近藤豊(訳)
*2)私のHPをご参照ください
私は、調べれば調べる程に、
「温室効果ガス、偉い!」
という思いが強くなってきました。
そこには、『寒くなるくらいなら、暖かくなるほうがマシじゃないか?』という気持ちもあります。
わが国は、歴史上、何度も冷害によって、壊滅的な作物被害を受けてきました。
農学研究員でもあった作家の宮沢賢治は、人為的に火山を爆発させてCO2を増加させるという童話を発表しております(「グスコーブドリの伝記」1932年)。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーが聞いたら、卒倒しかねない物語です。
さて、6種類の温室効果ガスの中で、特にCO2が目の敵(かたき)……ではなくて、注目されているのは、
(1)温暖化に対して決定的に影響が大きいガスであるため
(2)人類の努力でコントロールできる可能性のあるガスであるため
ですが、これについては次回にお話します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.