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“引きこもり”は環境に優しい?――CO2を数字で見てみる世界を「数字」で回してみよう(10) 環境問題(3/4 ページ)

» 2014年12月09日 13時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

「1トンのCO2」をイメージしてみる

 さて、国際エネルギー機関は「2030年までにCO2排出量を、164億トン削減する」を目標としていますが、私は、この数字(の大きさ)を全く実感できません。

 そこで、最初に「1トンのCO2」というものを考えてみようと思います。

 CO2の分子量は44(炭素Cの原子量12+酸素Oの原子量16×2)ですので、CO2の気体が22.7リットル(1モルの理想気体の体積)あると44gになります。これはスーパーマーケットの籠にCO2を満載すると、名刺44枚分の重さになるということです。

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 これを1トンにするには、25mプール(水深1.2m、25m×17m)にCO2を満載にすれば足ります。

 さらに、氷点下79度でドライアイスに固化した場合には、家のお風呂3倍分(640リットル)の体積になります(比重1.56)。

 CO2の作り方はいたって簡単です。たいていのものは、燃やせばCO2は生成できます。しかも、とても安定した物質なので、滅多なことでは分解することはできません。

 逆にCO2を分解して、再び酸素と炭水化物に戻すのは、恐ろしく難しいです。現時点では、植物の光合成の力に頼るしか方法がありません。高いエネルギーを使えば可能ですが、そのエネルギーを作るために、逆にCO2を生成してしまうからです。

 また、物を燃やすと、その物の重量の何倍もの重さのCO2が作られます。

 第1回の前半でも述べましたが、例えば、灯油を燃やせばその3.12倍の重さのCO2が生成されます。

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 まあ、面倒な話は忘れて、『1缶分の灯油を燃やすと、女性アイドルの公称体重くらいのドライアイスの塊(ダンボール1箱分)が作れる』と覚えておけばよいでしょう。

 また、ガソリンも灯油と同程度の重さになりますので、ガソリンスタンドで、満タン(43リットル)のガソリンを給油すれば、100kgのCO2が作られることになります。

CO2をまき散らしている“モノ”とは?

 こんな風に書くと、『石油ファンヒータや自動車を使う奴は、地球と人類の敵』と感じるかもしれません。

 しかし、わが家には、冬のシーズンで消費する灯油10缶分を遥かに超える、CO2をまき散らしているモノがあります。

 私たち家族です。

 調べてみて驚いのですが、私たちは、1日に約1kg強のCO2を排出しています*3)。ということは、家族4人で、1年間に実に、1460kg(1kg×4人×365日)のCO2を排出しているわけです。つまり、私たち家族は、ただ生きているだけで、1年間で、ガソリンスタンドでの満タン給油14回分のCO2を生成しているのです

*3)一日に呼吸する空気の量は、19m3で、その中に含まれるCO2の濃度は約3%(0.57m3)ですから、570000cm3/22400cm3×44g=1119.64g≒1kg)

 以前、私は「私たちは、『トイレの100ワットの裸電球(白熱電球)と同程度のエネルギーを消費して生きている』」というお話をしました。これを逆方向に考えてみると、「食べない、運動しない(スポーツジム通いなど論外)、時々息を止めてみる、一度死んでみる」という非アクティブな生活を送ることで、節電と同程度の環境への貢献が可能です(数字上は)。

 つまり

―― 「引きこもり」は環境に優しい

ともいえます。

 ちなみに、日本人全員が、ただ呼吸しているだけで製造しているCO2の総量は、たった1日で、実に1.237億kg、12万トン以上です。ドライアイスにして搭載すれば、全長250mのタンカーを沈めることができます。

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