モノのインターネット(IoT)向けネットワークの構築が本格化するにつれ、通信業者の競争も激しくなってくる見込みだ。フランスの新興企業Sigfoxは、一歩抜きんでようと試みている。
フランスのトゥールーズ(Toulouse)に拠点を置く新興企業Sigfoxは、米国全土をカバーするモノのインターネット(IoT)ネットワークの構築に向けて、7000万米ドルを超える資金の調達を目指す。2015年初めにはこの資金調達を終了し、IoT広域ネットワークの幅広い普及をめぐる競争において、一番乗りを果たしたい考えだ。
Sigfoxは、ISM帯域トランシーバを利用した全国的なIoTネットワークの構築で、他社を大きくリードしている。同社は既に、フランスとスペインでIoT全国ネットワークの導入を完了させている他、現在は英国内での構築を進めているところだという。また将来的には、全世界を網羅するIoTネットワークの構築を実現すべく、パートナー企業との協業によって、衛星通信基地局の設置を手掛ける予定だという。ただし、そのパートナーの企業名については明かしていない。
現在、低消費電力の広域ネットワークの構築をめぐり、競争が繰り広げられている。Sigfoxの野心的な取り組みも、その一環だといえる。少なくとも5〜6社(Huaweiや中国の大手通信機器メーカーなど)の企業が、それぞれ異なる手法で個々に取り組みを進めているが、その多くはまだ初期の段階にある。
さまざまな携帯通信事業者が、データ伝送速度は遅くても電池寿命が長く、広域に対応可能な機器を、低価格で提供しようとしていることから、Sigfoxは現在、厳しい競争に直面している。また、ISM帯における新しい無線LAN規格が策定されたこともあり、今後Qualcommなどの大手無線LANベンダー各社との間でも、新たな競争が生じると考えられる。
英国の市場調査会社であるMachina Researchで主席アナリストを務めるAndy Castonguay氏は、「IoTネットワークには、計り知れない可能性が秘められている。適切に導入できれば、産業や農業、輸送などの幅広い分野で、さまざまなユースケースに最適なネットワークとなる。しかし問題は、そのカバレッジだ。どこ一番に十分なカバレッジを実現できるのか、今はまだ分からない」と述べる。
Sigfoxは、Freescale SemiconductorとMotorolaに10年間勤務した経歴を持つセルラー技術の専門家Christophe Fourtet氏と、起業家のLudovic Le Moan氏が、共同で創設した。Sigfoxという社名は、“スマートな信号を提供する”という意味を持つそうだ。Fourtet氏は、「多くのIoTアプリケーションにとって、GSM方式よりもISM帯に接続した方が理にかなっている」という考えを持っていて、それを反映した社名だという。
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