スマートフォン/タブレット市場で活躍する中国のファブレス半導体メーカーは、これまではアプリケーションプロセッサの開発に専念していた。こうした企業の製品ポートフォリオには、Wi-Fi対応/Bluetooth対応通信チップはなかった。
だが、DSPコアを中心としたIP(Intellectual Property)プラットフォームのライセンサーであるCEVAでマーケティング部門のバイスプレジデントを務めるEran Briman氏は、「こうした状況は変わりつつある」と指摘する。Actions SemiconductorやRockchip、Allwinner Technology、Spreadtrumといった中国のアプリケーションプロセッサベンダーはいずれも、モバイル機器やウェアラブル機器向けの通信チップを製品ポートフォリオに加えたいと考えているという。
CEVAは、中国国内向けの3G/LTE対応スマートフォンに搭載されているチップからロイヤルティーを得ている。だが、BluetoothとWi-Fi接続技術のIPベンダーであるフランスのRivieraWavesを買収したことで、同社の状況は大きく変わった。Briman氏によると、CEVAは2015年前半にベースバンド以外のライセンス提供を開始し、2018年まで着実なペースで拡大していく考えだという。
Bluetooth通信チップを、“安価だがあまり価値はないもの”として扱ってきた多くの業界関係者は、Bluetooth Low Energy技術に関わるライセンス提供や、関連企業のM&Aが活発になっていることに驚いている。Briman 氏は、「Bluetooth Low Energyが状況を一変させた」と語る。
Briman氏によると、現在、中国の多くのアプリケーションプロセッサベンダーは、中国のスマートフォンメーカーに独自の接続関連技術を提供できるよう、CEVAからIPコアのライセンス提供を受けて、接続技術の開発に意欲を燃やしているという。
CEVAはRivieraWavesのワイアレス接続IP技術を基に、IEEE 802.11acとBluetooth Low Energy以外にも、IEEE 802.11ah/802.11pやBluetoothの新バージョンなどに対応するIPコアの提供も目指す。
Wi-Fi/Bluetooth通信チップを武器にスマートフォン市場に切り込んだBroadcomのような米国の大手半導体メーカーにとって、こうした状況は大きな脅威になるのではないだろうか。
BroadcomのCEO(最高経営責任者)を務めるScott McGregor氏は、脅威とは捉えていないようだ。同氏は、「“最高の技術”と“最高に近い技術”との間には大きな差がある。ましてや“最高ではない技術”などは論外だ。接続機能に求められるのは、最高の技術である。市場価値を獲得するには、多くの機能を搭載した最高の製品を実現しなければならない」と自信をのぞかせた。
Broadcomは、Wi-Fi通信チップ市場に率先して参入していった。新しい仕様が策定される前に、最先端技術を搭載したチップを提供することで、高いシェアを獲得した。接続技術でBroadcomを越えるのはなかなか難しい。
だが、そのBroadcomもLTEモデム事業から撤退せざるを得なくなった。Qualcommの圧倒的な強さと、中国のファブレス半導体メーカーの台頭が主な要因である。モバイル機器向けの接続チップ市場の勢力図がどうなるのか、それはまだ分からない。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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